回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 後編
公開 : 2019.02.08 17:10 更新 : 2021.01.28 16:55
バランスの良い走り
冷間時には多少ギクシャクした感じもあったが、これはまだ走行距離が少なく、慣らしが済んでいないためかもしれない。ちょっと本気で走らせてみれば、このクルマが持つ身のこなしの軽さと、本質的に備わっている卓越したバランスのよさに、すぐに気がつくだろう。
ステアリングは軽いが、これはごく自然にそれが実現できたからでもある。数kmも走ればすぐに、極限まで軽量化されたドライブトレインのおかげで前輪荷重が少なく、わざわざ人工的にアシストして軽さを演出する必要などまったくないのだとわかるだろう。実際、このクルマがすべての面で徹底したミニマリズムに基づいて造られているのは、まったく疑いようのない事実だ。
アップを運転していると、あらゆる所作にそのとおりの軽さを実感できるが、ほかの一部のエントリーモデルとは違い、そのフィールは決して実体感に欠けていたりしない。同様に、ハードに加速したところでエンジンからはどう聞いても単調でしかない音しか発せられないのは確かだが、それは決してドライバーの知覚に低レベルの振動が伝わってくることを意味してはいない。
さらにアップは最小回転半径が思い切り小さくなっており、ガラス面積の広いキャビンと車両感覚のつかみやすさと併せて、街中でとても運転しやすいクルマに仕上がっている。そのうえで、それなりに速度を上げても良好な安定感をまったく失わないのだ。