氷点下のヒーロー比較試乗 フォルクスワーゲン・ゴルフR vs メルセデス-AMG A35

公開 : 2019.02.23 11:50  更新 : 2019.02.25 11:49

金曜日 午前10時17分:キャット・アンド・フィドルパス

睡眠も今回の比較試乗の結論を出す助けにはならなかった。それどころか、現時点では自分のなかで整理すべきポイントが数多く残されている。

昨夜のうちに路上の雪はほとんどなくなり、今回最後の道となるバクストンからマックルズフィールドへと西に向かうキャット・アンド・フィドル・パスの交通量は極端に少なく、ほとんど貸し切り状態だった。数ある道のなかでも多くの点でここは最高の場所だが、80km/hの速度制限と速度超過監視カメラには注意が必要であり、それは予想できたはずだった

だが、好天も長くは続かなかった。昼前には英国西部を昨夜のうちに覆っていた雪雲がやって来て、カメラマンは道端にくるぶしほどまで積もった雪のなかで最後の1枚を撮ろうとして、スニーカーをびしょ濡れにしたようだ。

まるで、最初はこの旅を祝福するかのようだった天気が、いまやここまで来れたのは偶々であり、無傷で帰れるだけでも有難いと思えとでも言っているかのようだった

それでも、勝者を決める必要がある。ドライバーズカーとしてこの2台を評価するなら、A35が大差で勝利を収めることになるだろう。さらに、素晴らしいエンジンやフィールに溢れたステアリング、落ち着きある優れたシャシーといった、多くがホットハッチに期待する特徴とでもいうべきものを重視しても、わずかとはいえ、そのほとんどでA35がゴルフRを上回っている。

つまり、このモデルライフ末期を迎えたクラスレスなゴルフより、間違いなくA35は優れたモデルであり、多くにとってそれは大きな意味を持ってもいるのだ。


それでも、まだゴルフはその地位を放棄したり諦めたりしたわけではなく、それは、今回のテストでも自らのやり方をまっとうしてみせたことが証明している。

ハードに走らせてみれば、そのパフォーマンスとハンドリングでA35がゴルフRを上回っていたのは事実だが、ゴルフの多彩さと奥深い能力、さらには、洗練さと滑らかさを伴ってA地点からB地点へと移動する様子は、A35には見られないものだ。

市街地で渋滞に巻き込まれても、A35であれば、その乗り心地を不快に感じ、そのエンジンを煩わしく思うかも知れないが、ゴルフはより従順で扱い易さを感じさせてくれる。高速道路やA級路でも、Aクラスがその路面状況をそのままに伝えてくる一方で、ゴルフは本物の長距離ツアラーだと感じさせてくれる。

さらに、そのルックスに関しても、A35が慎重に考え抜かれた結果、A45そっくりに、かつ1割ほどアグレッシブさを控え目にしているところ、ゴルフRでは成熟と匿名性、そして控え目さを感じることができる。

ゴルフRは日常に溶け込むべく創り出されたモデルであり、A35ではそんなまねはできない。つまり、この2台は日々の自動車生活を豊かにしてくれる存在であり、Aクラスのほうがいくぶん影響力があるものの、ハードな運転を楽しんだあとでも、ふたたびともに日常生活へ戻っていきたいと思わせてくれるのはゴルフに違いない。

つまり、ゴルフRには、この36時間で証明したとおり、ピーク・ディストリクトの峠道でも揺らぐことのない独自のパフォーマンスが備わっているのだ。

そろそろ、カメラマンの湿ったスニーカーを乾かすべきだろうが、M1号線で乾ききるだろうか・・・。

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