足るを知るとは? アルピーヌA110/マクラーレン・セナ同時テスト 前編
公開 : 2019.03.03 13:15 更新 : 2021.05.13 12:00
ドライバーの腕が試されるクルマ
クルマが走りっぷりを見せつけるだけでなくドライバーに頭を使わせようとしていた時代へと、アルピーヌはあざやかなまでに時計の針を巻きもどしてくれる。なんだ、使い古したロードテストの決まり文句かとお思いになるかもしれない。そう、コーナーのたびに感じられる人間と機械のたぐいまれなる一体感、などなどカビの生えた一節の数々だ。
もはや、われわれはふたつの理由でそんな言葉を使わなくなった。ひとつはもう数十年も前にそんな言葉自体に飽きてしまったことだが、世のクルマがそんなふうに感じられなくなったことがもっとおおきな理由だ。
もっとパワーがほしいなど、走っていてこれっぽっちも思わなかったし、アペックスからの立ち上がりでもっとスピードがあればと歯ぎしりすることもなかった。現実世界では、5万ポンド(717万円)のA110に251psのエンジンはまったくもって「じゅうぶん」というほかない。さらに上を望む理由など、どこにあるのか。
試乗を終えたアルピーヌを、セナのとなりに停める。答えを出すのはわたしなのだ。怖れが先に立つ。