足るを知るとは? アルピーヌA110/マクラーレン・セナ同時テスト 後編

公開 : 2019.03.03 19:50  更新 : 2021.05.13 12:00

2台を公道で存分に乗り回した結果、確かに扱いやすく実力を発揮できる機会も多いアルピーヌの良さを再確認できました。しかし、明らかに過剰といえるセナの圧倒的な能力も魅力です。どちらを選ぶかといえばやはりセナという結論になりました。

もくじ

セナの実力は
有り余るパワー
底なしの実力を持つクルマ
持ち味を生かせるか
過ぎたるものの良さ
番外編:馬力競争はどこまでいくか

セナの実力は

セナでおなじ作業をくり返す。まず手はじめに、トラクションコントロールのスイッチを切る。馬鹿なことは承知だが、前に入れたまま乗ったときの感じはさしずめ「ダイエット・セナ」というべきもので、実力の片鱗すらうかがえないほど控えめな印象に終始したことが頭にあったのだ。

もうそのときとはちがう。こんどは熱狂を解きはなつための努力ではない。おそらくほとんどの状況で聖者のような自制心をためされることになろうことは、はじめからお見通しだ。この道を安全に走れるペースなどはるかに超える高性能なのだから、ほんのちょっと味見できればいい方だろう。

ということで、1、2速のことなど、エンジンのトップエンドとともにすっぱり忘れてしまうことにした。クルマが許すかぎり、高いギアで回転を抑えて走ることになるだろう。それでも、思わぬトルクの波がやってきたらとたんに仕事は忙しくなる。そのことだけでも、セナはドライバーにおおくを要求するクルマといえる。

とはいえ、わたしは気にしない。心奪われるような興奮する体験になるだろうし、運転技術への挑戦状ともとれるからだ。必ずしもヒースの生いしげる野原へすっ飛ばされるわけではないし―もっとも、不用意に扱えばそうなるはずだ―持てる経験のすべてを出して、ありったけの集中力を振りしぼらねばならないということだ。

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