足るを知るとは? アルピーヌA110/マクラーレン・セナ同時テスト 後編

公開 : 2019.03.03 19:50  更新 : 2021.05.13 12:00

底なしの実力を持つクルマ

どちらともいえるが、どちらかといえば前者だろう。今回の試乗でも魅せられたスピード感だが、それを演出するもっとも重要な要素とは速度そのものではなく、環境のめまぐるしい移り変わりなのだ。高度1万2000mを960km/hという速さで飛ぶボーイング747の中に座っているのがどんな感じかといえば、意味はおわかり頂けるだろう。

公道上ではセナの性能のすべてどころかほんのすこししか味わえないからといって、まるで面白みがないということにはならないのだ。じっさい、能力が底なしとわかればクルマ固有の特質も引きだせる。

安全の範囲内でクルマの能力をどれだけ深いところまで垣間見られるかわかれば、それ自体がとびきりの体験になる。要求される技能と厳しさは、とうていアルピーヌの比ではない。

とはいっても、カン違いしないでほしい。ありがたいことに、わたしは長い高速コースのエストリル・サーキットで思う存分セナを走らせ、レースモードに入れてそれこそほかのロードカーでは到底ありえない速さも味わったこともある。だがそれとて自制心からは逃れられず、すこし悶々とさせられる体験だったのだ。

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