ロードテスト ボルボV60 ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.03.10 09:50
走り ★★★★★★★★☆☆
ボルボの2.0ℓディーゼルは、いつでも洗練性の手本のようだというわけではなかったが、このクルマのエンジンもまさにそうだ。カチャカチャ音を立てて始動すると、ドライブEユニットは安定したアイドリングに入るが、音は比較的大きく、実測49dB。参考までに、2012年にテストした320dセダンは48dBだった。スロットルペダルを踏むと、ディーゼルのゴロゴロ音がいたるところで加わる。V60の購入を検討する上で重視する要素ではないかもしれないが、ライバルたちの方がいい仕上がりなのは確かだ。
しかし、もっと大きなイライラの種は、8段ATが時として、発進時の適切なギア選択に遅れることだ。ギアボックスが明らかに手間取るので、ジャンクションからスムースに走りだそうとしても妨げられる。
いったん走り出してしまえば、加速はスムースだといえるが、本質的にはゆったりしている。コンフォート志向のファミリーカーを造るメーカーだという、ボルボにイメージに沿ったものだ。0-97km/hの実測タイムは8.9秒で、公称値の7.6秒には大きく遅れる。また、235/45タイヤが、路面に足がかりを見つけるのに苦労しているところもある。ちなみに320dセダンは、同じテストで7.6秒をマークした。
ギアボックスもまた、走り出すと落ち着いた作動ぶりを示すようになり、シームレスで乱れのない変速をみせる。自分でギアチェンジをしたいというならマニュアルモードも選べるが、ステアリングホイール周りにシフトパドルなどの変速デバイスは用意されていない。しかも、シフトレバーの手動変速ポジションが、押してシフトアップ、引いてシフトダウンという、あべこべに感じるレイアウトとなっている。
対して、褒めるべきはブレーキ性能だ。安全重視のボルボに期待される通り、113km/hからのフルブレーキングでも挙動は危なげなく安定しており、完全停止まで46.2mと優秀な制動力も発揮する。
テストコース
ミルブルックのヒルコースにあっても、V60がその信念を曲げることはなかった。大げさな話ではなく、ボディコントロールはわれわれがボルボのワゴンに期待するそれのさらに上を行き、それによって生まれるグリップとトラクションは、常にこの前輪駆動車を素早く、足取り確かに前進させたのだ。
同程度のパワーを持つBMW3シリーズ・ツーリングなら、より華々しく、自然なバランスをもって、疑いの余地なく駆け抜けるだろうが、その方が勝ると言い切れるものでもない。客観的に雌雄を決したいならラップタイムを計測するしかない、という程度の差だ。
もし、V60の特に不足を感じる分野を挙げるなら、それはステアリングだ。ほとんどのV60オーナーが試みないようなレベルの攻めた走りをしても、前輪の動きは正確だ。ただし、センターから切り始めた際のレスポンスがもう少し明快なら、このクルマの安定ぶりに肩を並べられる高水準の俊敏さが感じられたことだろう。
ESCスポーツモードは上々の制御で、悪影響のある勢いはなしにホイールスピンを抑えてくれる。
緩やかなカーブで、スロットルを開いていけるだけのバランスを、V60は見せてくれる。
タイトなヘアピンでタイヤが発するスキール音は、アンダーステアの発生を知らせるが、それも気づこうとすればの話だ。
発進加速
テストトラック条件:乾燥路面/気温24℃
0-402m発進加速:17.0秒(到達速度:137.6km/h)
0-1000m発進加速:30.7秒(到達速度:177.0km/h)
BMW320dスポーツ セダン(2012年)
テストトラック条件:湿潤路面/気温7℃
0-402m発進加速:16.0秒(到達速度:142.1km/h)
0-1000m発進加速:29.2秒(到達速度:180.2km/h)
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温24℃
97-0km/h制動時間:2.81秒
BMW320dスポーツ セダン(2012年)
テスト条件:湿潤路面/気温7℃