ラインの終わりは旅のはじまり 完成車の輸送行程を追う
公開 : 2019.03.16 18:50 更新 : 2021.03.05 21:36
工場を出た完成車のはじめの一歩は、販売店から家までの道のりではありません。そこまでに、道路/鉄路/海路にわたる壮大な旅路をいくこともあるのです。今回は、マイク・ダフがピカピカのキア・シードの行方を追いました。
もくじ
ー キアの工場をたずねる
ー 出荷前検査を視察
ー 完成車の配送作業へ
ー 列車への積み込み
ー さらに船便へ
ー 急ピッチで進む船積み
ー 船内のようす
ー 思わぬトラブルも
ー 英国に到着 在庫管理システムへ
ー 丁寧な納車前検査
ー 販売店へと移送へ
ー 運輸業界の活躍
キアの工場をたずねる
現代の自動車生産工場における目を奪われるほどあざやかな流れ作業の話はいくらでも書かれているし、もちろん完成したピカピカのニューモデル自体についてもいうまでもない。
だが、今回の話はそのあいだ、すなわち工場の生産ラインを離れた完成車が販売店までいかにしてたどり着くのかという話だ。
今回、完成車の搬送に帯同取材したいというわれわれの申し出に韓国メーカーのキアが応えてくれた。ただし追いかけるのは本国生産のモデルではなく(3週間も船に缶詰めだなんて、クリスマスの計画が台なしだ)、スロヴァキアのジリナ工場でつくられる新型シードの英国向けモデルだ。
2008年にAUTOCARで初代シードの長期テストを担当して以来ジリナにははじめてやってきたのだが、この異国の地でいわゆる「言葉のすれ違い」を目撃してしまった。
入口検問でのやりとりの後で広大な敷地に入り、役員用駐車場に停まっていた茶色のスポルテージに目をやると、その横っ腹に「QUALITY ASS」の文字が大書されていたのだ。これは「品質保証(assurance=保証)」を意味する合い言葉なのだが、ざんねんな略し方というべきか、われわれ英国人には「すばらしい間抜け野郎」とか、あるいはもっと下卑な意味合いにも取れてしまう。けれどもこれが、われわれがはるばるやってきたおおきな理由なのだ。
工場に足を踏みいれてまず頭にうかんだのは、スタート地点をどこにおくべきかというある種実存的な疑問だった。個々の、あるいは組み立て済みの部品があつまって1台の完成車の形をなすのは、いったいどこなのか。