AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(前編)

公開 : 2019.03.16 09:45  更新 : 2019.06.03 08:54

ポルシェ911

非常に多才で、運転して素晴らしく、維持も容易なクルマだ。公道走行可能なモデルでありながら、デイトナやセブリング、さらにはル・マンといった主要な自動車レースで、クラス優勝ではなく、総合優勝するほどのクルマであり、モンテカルロラリーでは3連覇を果たすとともに、ダカールでも複数回の優勝を遂げている。

映画スターやレーシングドライバーに愛されたクルマであり、常に他のモデルに大差をつけてクラス最高の1台だと評価されてきた。そして、このクルマは56年前に誕生し、いまでも現役で存在しているのだ。

新しく魅力的な自動車の形態を思い付いたとしても、多くの場合、すぐに同じようなモデルが登場するものだが、ポルシェ911は例外だった。フラットシックス・エンジンをリアに搭載するというのはポルシェの専売特許ではないものの、同じような方式を採用した最後のモデル(失敗に終わったシボレー・コルベアだ)が生産を終了してからすでに50年が経過しており、新たなモデルが登場する気配もない。

このレイアウトは例外的なものであり、優れたパッケージとショートホイールベース、驚くべきトラクション能力と大地に根を下ろすかのような低重心、さらには見事なハンドリングを備えたスポーツカーを実現している。もちろん、弊害もあるが、それも言われるほど重大なものでなく、既存の技術で対処可能なものばかりだった。


では、なぜ誰もこのクルマの後を追わなかったのだろう? それは、最初からポルシェがあまりにも素晴らしいモデルを創り出したことで、リアエンジン・リアドライブとは、ほとんどポルシェと同義語になったからであり、同じようなモデルを創り出そうとすれば、それはすなわちポルシェの名を高めるだけだった。

こうした事実のすべてが911を偉大なモデルにしているが、これだけでは、そのコンセプトがこれほど長く続いた理由としては不十分であり、その理由を理解するには、911の歴史を振り返る必要がある。

最初にポルシェが911に替わるモデルを登場させようとしたのは、より快適で、より扱い易いモデルを求めるユーザーからの声が高まった1970年代後半のことであり、フロントに水冷エンジンを搭載したモデルを登場させたものの、結局は多くの顧客が911を選ぶ結果となった。

そのため、ポルシェは911に数多くのボディスタイルとエンジンバリエーションを用意することで、単なる911のイメージに魅力を感じ、本来このクルマが持つ走行性能には感心を示さないようなユーザーも含めた、さまざまな需要に応えることにしたのだ。だが、もしポルシェが、これまで20年にわたって続くGTシリーズのような、新たな方向性を示すことがなければ、911の命運も尽きていたかも知れない。

だからこそ、ポルシェは、われわれのように偉大なドライバーズカーを愛するものや、911のようなクルマのイメージを長く記憶しているひとびとのために、つねに911をそれまでよりも優れたモデルにするだけでなく、新型タイプ992のように、より偉大なドライバーズカーにすべく改良を続けて来たのであり、ほとんどのクルマが長い年月の間に特徴を失っていくなか、911はさらにその純度を高めている。

他のすべてのエントラントが登場する前に、911に1票を投じるべきだとは言わないが、そうしない理由などあるだろうか?
(アンドリュー・フランケル)

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