AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(中編)
公開 : 2019.03.16 11:50 更新 : 2019.06.03 08:54
メルセデス Sクラス
自動車技術の拡がりに関して言えば、その先頭に立つのがメルセデス・ベンツ Sクラスであることに間違いはない。
W126では、1981年時点ですでに運転席エアバッグと助手席シートベルトテンショナーを備えており、ABSはオプション扱いだったものの、トップモデルの500には標準装備となっていた。Sクラスは安全性も非常に高く、頑丈なキャビンに加え、ドア・エッジ部分をフレームにオーバーラップさせることで、衝突発生時にもドアが開かなくなることを防止している。
1965年、メルセデスは「新世代」ミディアムサルーンを突如として廃止し、堂々としてエレガントなスタイルが特徴の大型モデルを登場させている。ポール・ブラックのデザインによるこのW108/109は、公式にはSクラスを名乗らなかったものの、このモデルがすべての始まりだった。溢れる存在感とスペース効率に優れたこのモデルでは、サイドの大きなガラスエリアに曲面ガラスを組み合わせるとともに、一段低く誂えた後席フロアは、広大なキャビンスペースを確保していた。
Sクラスの命名法など退屈なだけかも知れないが、初期に登場した300 SEL 6.3には興味深いストーリーがある。重量級の600が積んでいた驚異の6.3ℓV8を、比較的軽量な300のボディに押し込むことで誕生した、このクルマは世界初のラグジュアリー・スーパーサルーンだった。
このオリジナルモデルがなんと呼ばれようと、これほどの品質を備えた高級サルーンを大量に作り出すことのできるメーカーはメルセデスをおいて他にはいない(史上もっとも売れたラグジュアリーカーだ)。その品質の高さは、どんな小さなボディリペアを行っても、ボディ全体の再塗装が必要になるほどであり、このこだわりの高品質が、高額な価格設定を正当化するとともに、繰り返される納車待ちの列が、さらにこのクルマを偉大なモデルにしていた。
さらに、このクルマの存在が、1999年から2005年にかけて生産されたW220の悪評にもかかわらず、Sクラスを生き永らえさせることになったのだから、W108/109のブリッピングを聞いたら敬意を払うべきだろう。
Sクラスが成熟期を迎え、清新さを失う前に登場したのがW140だったが、このモデルはあまりにもSクラス然とし過ぎていたのかも知れない。当時、そのドアロックモーターや大きすぎるボディサイズは嘲笑の的となっていたが、このクルマはメルセデスの品質、技術、そして、その大げさな程の存在感を凝縮したモデルだったのだ。ルックスは決して褒められたものではないが、いま思えば、このクルマは史上最高のメルセデスだったのかも知れない。一方、最新のモデルが示しているように、W221からW222世代で、メルセデスはふたたびSクラスに最新技術を投入するようになっている。
Sクラスは、常に世界中の金満政治家や独裁者、さらには企業の重役連中にとってのファーストチョイスであり、彼らはこのクルマのリアシートに座って、その品質の高さとスタイル、さらには豪華さに満足しているのだ。
非常に洗練され、完ぺきな快適性を備えたモデルであり、Sクラスというブランドそのものが、常に間違いのない大型サルーンであることを証明している。中古車でも素晴らしく、新車であれば、ラグジュアリーカー好きにとっては唯一無二の選択肢だろう。そして、Sクラスは現在の自動車技術をリードしてきたのだ。
だからこそ、メルセデス・ベンツ Sクラスに1票を投じて頂きたい。
(ジェームズ・ルパート)