AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(後編)
公開 : 2019.03.17 05:50 更新 : 2021.03.05 21:42
ロータス・セブン
個人的に、アイコンとは、時代を超越する驚くべき基準を作ったモデルであるべきだと考えている。
いまもオリジナルのまま作り続けられていたならば、ディフェンダーやビートル、ミニ、さらにEタイプといったモデルにもその資格があっただろう。この基準に従えば、選ぶべきは1957年に登場し、その後、勤勉な天才とでも呼ぶべきコリン・チャップマンがフォーミュラ1の世界に専心しようとしたことで、1973年にケーターハム・セブンとして生き永らえることとなったロータス・エランこそが、アイコンと呼ぶべきモデルとなる。
自動車世界を見渡しても、ロータス・セブンほどそのデザインに、「軽量さ」という捉えどころのない高性能をうまく表現しているモデルは存在しない。デビューから62年、同じようなサイズと重量、さらにはメカニカルレイアウトを持つ2シーターモデルが、どれもセブンの模倣のように見えたのは、紡錘型のボディと三角形のベースを持つフラットなフロントスクリーン、素晴らしくシンプルなノーズコーンと一体化したグリル、さらにはボディとフロントフェンダーのあいだに配置された印象的なヘッドライトといった、これ以上のデザインは無いと言えるほど、完ぺきに考え抜かれたセブンの特徴のせいだった。
さらに、このスタイリングそのものが、セブンの本質を完ぺきに表しており、まったくクルマに興味のない人間でさえ、このクルマの目的が、シンプルな運転の楽しみを体現することだと即座に理解することができるだろう。
60年以上の歴史を誇るセブンには優れた資質が備わっている。どこにでもあるメカニカルコンポーネントを集め、それをうまく活用することで、サーキットでも名門ブランドが送り出すミッドシップスーパーカーに勝る速さを誇るモデルである一方、そうした優れたパフォーマンスにもかかわらず、このクルマの購入や維持に掛かるコストは安く、その軽量さとシンプルさは、ハードなドライビングを可能にするとともに、例え主要パーツの交換が必要となった場合でも、他のどんなクルマよりも手ごろな価格で、作業時間も短くて済む。
セブンの秘密はつねにそのメカニカルレイアウトにあった。このクルマにはオーバーハングなど存在せず、つまり、すべての重量物はそのホイールベース内に収まっており、それが素晴らしい俊敏性をもたらしている。リアアクスルの直ぐ前、独立したボディタブに低くしっかりと固定されたシートを持つセブンでは、乗員のポジションもピタリと決まっており、ドライバーはロングノーズを見渡す形になる。
セブンのドライバーであれば、誰もがコーナリング時のロールの少なさを口にするが、それこそが、コーナーへの積極的なアプローチを可能にしている。アクセルオンで容易にドリフト姿勢に持ち込めることでもセブンは有名であり、それは、このクルマのドライビングポジションや俊敏性、さらには理想的な重量配分といった数々の要素が理由だ。
さらに、乗員は常にアルミ製ボンネットとそこに開けられたルーバー、見事な造形のフロントフェンダー、さらには愛らしいヘッドライトを目にすることになり、このクルマはいつでも何か特別なモデルに乗っていることを思い起こさせてくれる。
長年にわたり、ロータスとケーターハムが送り出してきたセブンは、英国版AUTOCARが主催するパフォーマンスとハンドリングを競う選手権において数々の栄光に輝いており、セブンのために新たなカテゴリーを作ることがもはや当たり前となっているほどだ。このクルマを他のモデルと同じカテゴリーに入れるのは、単にそのパフォーマンスを際立たせることにしかならない。
先に名前を挙げたアイコンたちは、すでにその生涯を終え、他のモデルは性能を向上させてはいるものの、それは、自身の歴史を犠牲にしてのことだった。だが、セブンが現代性やその能力、さらには若い世代のドライバーに対する魅力を失うことはない。
ライバルのスポーツカーメーカーたちは、はるか昔にセブンに対処する最善の方法を学んでいる。つまり、セブンには関わらずに、自分たちは違う道を行くという方法を。
(スティーブ・クロプリー)