ゴーン元日産会長の保釈劇 仏メディアの報道は 日本の視点、違和感も

公開 : 2019.03.11 18:10  更新 : 2021.10.09 23:31

ゴーン、変装をおもしろがった?

ゴーン前会長は、作業員姿に扮することをおもしろがったという談話も報じられているが、それは今後の法廷での闘いに臨むにあたって決意も新たに……といったヒロイックな話でも何でもない。

ただ単に「ネタになる」から引き受けたのではないか、と予想する。

というのも有罪でも無罪でも、今回の彼の経験はフランスその他の国で、何年先になるかは分からないが、いずれ自叙伝の一部として興味を引く話ではある。それにハロウィンや学校劇など、子どもが仮装を楽しむ機会はフランスの生活にはしょっちゅうある。

それに、元よりフランスのひとびとにとっては、空から見た小菅拘置所の、×型に交叉した建築スタイル自体が「カフカ的」で、いかにも不気味で謎めいた独裁体制か何かにふさわしい。

そこで伝統的に行われてきた、一方的で強権的な長期拘束という、ほとんどバーレスクな不条理劇の主人公をゴーン前会長は演じさせられているような状況と見られている。

保釈時に扮装に応じたのは、もはやネタとして仕入れておいて損のない、「演出のひとつ」なのだ。もし弁護士の1人がいう通り、成功してマスコミに住居の場所を嗅ぎつけられなければめっけもの、ぐらいの感覚ではなかっただろうか。

ただ、ひとつ不気味なことがある。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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