ロードテスト フォルクスワーゲンTロック ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.03.16 11:45 更新 : 2019.03.27 18:14
フォルクスワーゲンが、グループ内でも増殖中のジャンルであるコンパクトクロスオーバーに、自ブランドでもようやく参入しました。満を辞しての登場だけに、その完成度はなかなか。しかし、すでに高評価を得ている傘下のセアトに、わずかながら及びませんでした。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術
ー内装
ー走り
ー使い勝手
ー乗り味
ー購入と維持
ースペック
ー結論
はじめに
日産がキャシュカイの生産を開始した2006年、これほど多くのユーザーにインパクトを与えることになるとは、誰が予想し得ただろうか。SUVの高いドライビングポジションと、より一般的なハッチバックのボディサイズを組み合わせ、商業的に成功したと誰もが認めるはじめてのクロスオーバー・ハッチバックが誕生したのだ。
他社はいち早く日産の手法を真似たモデルを続々投入。それは販売面の成功を見込んでのことだが、ユーザーがより発展したクロスオーバーを求めるようになるのにつれ、モデル数は増えていった。眠気を誘うようなクルマばかりだったそのセグメントに、よりスポーティなスタイリングや、ダイナミックでドライバー志向のハンドリングを備えたモデルも増えることとなる。エクセレントなセアト・アテカや衝撃的なトヨタC-HR、プレミアムなアウディQ2などを知ったあとでは、いくら完璧な出来でも、日産が刷新しあぐねているキャシュカイは突如として古臭く見えてしまう。
遅ればせながら、そこへフォルクスワーゲンが持ち込んだのが、今回テストするTロックだ。ブランド内のラインナップでいえば、トゥアレグやティグアンの下位に置かれるモデルで、価格は1万8950ポンド(約284万円)からという設定だ。
このクルマに課せられた任務は、なかなか困難だ。なにしろ、フォルクスワーゲン・グループには、オートカー的にクラストップと位置付けるアテカをはじめ、Q2や新型スコダ・カロックがすでに存在している。つまり、身内だけを見回しても、強力な競争相手には事欠かないのである。
そんな激戦区に、Tロックが提案するものは何か。今回のテスト車は、190psの2.0ℓガソリンターボを積む4WDモデルで、パフォーマンスもハンドリングもGTI的なものが期待される。クロスオーバーの水準に照らせば、ルックスはよりスポーティでエレガント。狙いどころが明確で、やや飾り気のあるところも興味深い。もっとも、過剰なところはまったくないが。
3万1485ポンド(約472万円)というテスト車の価格が、安くないのは確かだ。装備内容の近いアテカなら1400ポンド(約21万円)ほど低価格だし、ミニ・カントリーマンのクーパーSは2万5215ポンド(約378万円)から買える。果たして、ライバルたちを文句なく退けるテスト結果で、その高めの値付けが正当化できるのだろうか。