まるでミドシップのような身のこなし

ワインディングのタイトコーナーを攻め込んでいるときには、リアタイヤにかかる荷重の大きさや自然さを感じる場面もあることは事実。しかし余程のことがない限り、992型の911は、まるでミドシップのクルマのように振る舞う。理由の1つはフロントトレッドが大幅に広げられたことで、フロントタイヤはどっしりとコーナーへ食らいつくようになったから。もはや異常に軽く感じるフロントタイヤを修正しながら、エイペックスに向かわせる必要はなくなった。

カブリオレ単体で見れば、増加した車重はさほど気にならないといえるが、クーペと乗り換えて比較すると、増えたボディのマスはわかる。特に狭い山道を飛ばすような場面では実感すると思う。それでも、充分に俊足で、機敏なコーナリングを味わえるクルマであることには違いない。

後輪駆動のカレラSの方が、ドライビングの味わいの糖度はカレラ4Sよりも上。もちろんカレラ4Sは4輪駆動だから、食らいつくようなレスポンスと安定性はまさるものの、ステアリングは比較すると重鈍に感じられるし、妙なグリップ感がつきまとう。シャープで直感的な、甘美なカレラSとは異なる味わいなのだ。

新しくなったインテリアは、基本的には非常に良い雰囲気だし、シートハイトは低く、ドライビングポジションも素晴らしい。ただ、とても小さなリアウィンドウから見える視界はかなり限られている。せいぜい、切り取られた空が見える程度といっても過言ではない。

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