試乗 アウディR8 V10 孤高の大排気量NAエンジン ハンドリングで及ばず
公開 : 2019.03.29 11:20
最大の価値は自然吸気V10エンジン
反面、R8を選択する理由は、ある意味ひとつだけでいい。最新版ではエントリーグレードの価格が数%上昇したものの、それでもポルシェ911の中間グレードと同等の価格で、極めて卓越したV10エンジンを手に入れることができるのだから。極上のサウンドトラックに、信じられないほどのリニア感、ターボなどが介在しない生の高回転域の魅力は、一生モノの記憶に刻まれるエンジンだと思う。
ミドシップのエキゾチックカーにとって、過給装置はさほど重要なものではないと実感する。しかもこのエンジンは、ほかとは異なる神秘性を備えた、普通とは異なるユニットでもある。クルマの性格を完全に支配し構成している存在だから、当然といえば当然だ。
標準装備の通常の(パッシブ)ステアリング・システムと、オプションのアクティブ・バリアブルレシオを持つダイナミックステアリング・システムは、ともにフェイスリフトで調整を受けている。しかし当面は、英国でダイナミックステアリングを選べるのは限定グレードの「ディセニアム」のみ。アウディによれば、選択できるグレードは追って広げられるとのこと。ちなみにディセニアムとは、10周年のこと意味する。
標準のステアリング・システムはスーパーカーの部類ではギア比が低くスローで、ロックトゥロックは3回転。特に最小回転半径が小さいわけでもない。また、ステアリングの重み付けや路面から伝わる感触も若干改善されている。いずれにせよ、乗り心地やハンドリングなどのフィーリングは、特別な内燃機関のソプラノを引き立ててくれるバックボーカルのようなものだと思う。