アストン マーティン・ヴァルキリー 開発シミュレーター体験 ゲームとは違う
公開 : 2019.04.14 07:50
期待通りとは言えず
シミュレーターを動かすコストは安くはなく、そのため、与えられた時間は限られていた。スパのコースを、コンピュータが再現した平均的なスーパーカー(グッドウィンによれば「マクラーレンのようであり、フェラーリにも似ている」とのことだ)に乗って1周したあと、その後、完ぺきなバーチャルのヴァルキリーでもう1周することになった。
このシミュレーターがレース用に開発されたものであることは明らかだ。よじ登るようにF1マシンのカットモデルに設けられたコックピットへと乗り込むと、その360°スクリーンが映し出す景色はシングルシーターのものであり、両サイドにはミシュランと書かれたタイヤのサイドウォールが見える。
さらに、ブレーキングには左足ブレーキが要求され、ステアリングホイールも完全にF1マシンのものだが、グッドウィンによれば、シフトパドルとコントロールルームとの通話が可能な通話ボタン以外、完全に無視して構わないと言う。
完ぺきなシミュレーターには倉庫ほどのスペースが必要となるため、シミュレーション可能な状況には限界があるが、それでも、コックピットで感じる衝撃は十分過ぎるほど再現されていた。最初に感じたのは違和感であり、それは、この大型シミュレーターが、以前試したことのあるビデオゲームほどのリアリティーを感じさせてくれなかったことが原因だった。
スクリーンに映し出される画像も、市販のレーシングシミュレーションゲームの解像度には及ばない。360°スクリーンの映像は立体的なものの、距離感が欠けており、早すぎるブレーキングや減速不足の原因となった。2周目には、そんなスピードのままオールージュへと突っ込んで、マシンを大破させ、ラディオンへと続く坂の下で、真っ暗な空間に漂うこととなった。
最終的には大きなミスなく周回できるようになったものの、グッドウィンが結果を確認しようとコックピットを覗き込んでセッションの終了を告げた時には、シミュレーションはシミュレーションでしかないと言うしかなかった。つまり、期待したほどの経験はできなかったということだ。
「それは、これがゲームではなく、あくまで開発用ツールだからです」と彼は言う。「モーションプラットフォームですが、その動きは、経験を積んだシミュレーターのドライバーを満足だけるだけのものでしかありません。実際、どんなシミュレーターでも実車と同じ感覚を完全に再現することなど不可能です。それでも、シミュレーターと実車の挙動はリンクしており、そのふたつの橋渡しをするものが経験値なのです。」