ロードテスト メルセデスAMG GT 4ドア・クーペ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.04.20 09:50
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
全長5050mm、車両重量2.1トンのクルマを、それより小さく、軽く、低いスポーツカーのようなハンドリングに仕立てるために満載されたテクノロジーは、理解しがたいところがある。GT4ドア・クーペは、2ドア版が用いる軽量スペースフレーム構造を採用せず、メルセデスのモノコックプラットフォームであるMRAをベースとしている。そうなれば重量がかさむのはやむをえず、それを克服するための技術を用いていても、物理的な不利は避けられない。
テスト車はGT63 4マチック+で、英国市場では現時点でのエントリーグレード。エンジンはアファルターバッハ製の4.0ℓV8ツインターボで、おなじみとなったホットVレイアウトを採るが、ターボチャージャーは新採用のアンチ・フリクションと呼ばれるベアリングを新規採用し、シャープなエンジンレスポンスに寄与する。最高出力は585ps、最大トルクは2500〜5000rpmの範囲で81.6kgmを発生。上級グレードのGT63S 4マチック+は、パワーが639ps、トルクが91.8kgmまでアップする。どちらの場合も、AMGは例によって、4シーターのデビューにあたり、出し惜しみするようなことはしていない。
トランスミッションは、ATのトルクコンバーターを湿式多板クラッチに置き換え、重量とイナーシャを削減した9段マルチクラッチ変速機(MCT)。4WDシステムの4マチック+は、電子制御クラッチにより、通常は100%後輪に送られる駆動力を、状況に応じて50%まで前輪へ分配する。
ドライブトレインやシャシーの先進技術はまだまだある。後輪のトルクベクタリングとアクティブLSD、四輪操舵は標準装備で、軽量アルミホイールやパッシブ可変レシオの電動パワーステアリング、GT Rクーペと同様のアクティブエアロも導入。AMGダイナミクスと呼ばれる制御システムは、複数設定された走行モードを切り替えると、トラクションコントロールとスタビリティコントロールのプログラムも同調して変更され、AMGによれば、下位グレードでは実現できないレベルのファインチューンされたハンドリングを、ドライバーに提供してくれるという。
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン的なレイアウトで、リアがマルチリンク。V8モデルにはエアスプリングとAMGライドコントロールことアダプティブダンパーがセットで装備される。スタビライザーはGT Rに由来するアイテムで、前後アクスルの軽量化に寄与する。
そうはいっても、テスト車の実測重量は、満タンで2135kgにもなる。前後重量配分は54:46なので、前軸荷重は実にフォルクスワーゲン・ポロ1台分のウェイトより10kg重い1155kg。これは、昨年テストしたBMW M5のそれを200kgほど上回る。