著名カーデザイナーの傑作と凡作 18選 後編
公開 : 2019.05.04 10:50 更新 : 2021.02.02 12:51
凡作:デ・トマゾ・ビグア/クヴェール・マングスタ(2000年)
デ・トマゾ社は、TVRグリフィスのイタリア版として、ビグアを計画するが、後にマングスタへと名称が変わった。ひとびとのパンテーラに対する記憶は薄れ始めていたが、一部のエンスージャストは1960年代のオリジナルのマングスタのことを覚えていたから、デ・トマゾは歴史に依存することが難しかった。マングスタは、パワー競争に気が取られがちなスーパーカーの購入層を振り向かせるためにも、突出したパッケージングだけでなく、力強いブレイクスルーが求められていた。
そこでガンディーニは、ひとびとを振り向かせるような新しいデザインに挑戦する。確かにシャープなラインとは異なるスタイリングという点で成功はしたが、多くのエンスージャストは好意的に受け止めてはくれなかった。上品なひとは、マングスタを型破りなデザインだと表現したが、手厳しい評論家は様々な要素を混ぜ込んだ、ビデオゲームに出てくるような架空のクルマのようだと、そのデザインを評価した。
その後、デ・トマゾはこのコンセプトカーから手を引くが、クルマの開発に資金援助していたクヴェール社がそれを引き継ぎ、クヴェール・マングスタとして発表した。しかし、冴えないエクステリアデザインをまとい、誰も聞いたことのない自動車メーカーが製造する、パフォーマンスも確かではないクルマは、スポーツカーという競争の厳しいセグメントでは居場所がなかった。
さらに経緯はよくわからないが、当時すでに資金的に厳しかったであろうMGローバーがこのプロジェクトを買収し、2003年にMG XパワーSVとして焼き直す。ポルシェ911に匹敵する価格を付けて。販売台数はわずか82台前後だといわれており、息絶え絶えだったMGローバーにとっては、かなり応える一撃になったに違いない。