ロードテスト メルセデスAMG C63 Sクーペ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.05.12 11:50 更新 : 2021.01.30 21:38
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
単なるフェイスリフトに位置付けられる改良なので、外観の変更は最小限だ。非難しているわけではない。近年のDセグメントにおいて、クーペやセダンのエキサイティングなバージョンは多いが、アファルターバッハのCクラスほど人目を引くアグレッシブなエクステリアのものはないのだ。
ヴィジュアル要素はおなじみ通り。ホイールアーチは大きくフレアし、リアトレッドはセダンやワゴンより広げられて自己主張を強めている。リアエンドには四角いテールパイプが2本ずつ左右に並び、パナメリカーナグリルの後ろに鎮座するエンジンの正体を示唆する。
それはこれまでと変わらず、シリンダーバンクにターボチャージャーを2基配置した4.0ℓV8。最高出力と最大トルクは、スタンダードなC63クーペでは476psと66.2kg-m、今回テストするC63 Sでは、5500〜6250rpmで510ps、たった1750rpmから4500rpmの間で71.3kg-mを発生する。パワーに関しては、アルファ・ロメオやBMWのライバル車たちを大きく引き離すまでには至らない。
マルチクラッチ・トランスミッションは、これまでの7速から9速へ格上げ。ただし、駆動方式は後輪駆動のままだ。トルクコンバーターではなくクラッチを装備することで、重量を抑えるとともに、スロットル入力の変化に対するレスポンスを高めている。LSDは、C63では機械式だが、Sバージョンは電子制御式。また、これもC63 Sに与えられるダイナミックエンジンマウントは、振動を減らすとともにターンインのレスポンスを改善する。
サスペンションは前後ともマルチリンクで、コイルスプリングとAMGのライドコントロールと呼ばれるアダプティブダンパーを装備し、わずかながら再チューンされた。走行モードの切り替えにより、ダンパーの固さはもちろん、ステアリングの手ごたえやシフトスピード、スロットルレスポンスも変化し、走りの幅広さを見せる。
しかし、おそらくもっとも有意義なアップデートは、新たなAMGダイナミックプログラムを得たことだろう。これにより、リアディファレンシャルの作動の性質を、ベーシックからマスターまでさまざまなモードに変更することができる。AMG GT Rで導入されたのと同様に9ステージ式となるトラクションコントロールと協調して、ドライバーの能力に合わせた遊び心ある挙動を引き出してくれるデバイスだ。
車両重量の公称値は1745kgだが、これはかなり正確なデータだと思われる。テスト車は、満タンで実測1770kgだったのだ。前後重量配分は、55:45である。