ロードテスト キアe-ニロ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.05.18 07:50 更新 : 2021.03.05 21:36
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
ソウルEVはガソリン車からの派生モデルだったので、このe-ニロがキア初の電動パワートレイン専用車ということになる。回りくどい言い方だが、これはハイブリッド(HV)とプラグイン・ハイブリッド(PHEV)のバリエーションもあることを踏まえた結果だ。つまりは、エンジン単体搭載を想定せずに新規設計されたプラットフォームの持ち主、だと言い換えてもいい。
その3タイプの中で、もっともパワフルであり、パフォーマンスの公称データでもトップに位置するのが、バッテリーEVであるe-ニロだ。価格はPHEVのおよそ2割増しで、これは一般的なハッチバックなら、だいたい中級グレードとハイパフォーマンス仕様との差に相当する。
e-ニロの駆動用バッテリーの容量は64kWhで、5年前に発売されたソウルEVのおよそ2.5倍にあたり、現状では同価格帯のEVのほとんどを大きく上回る。EVとすることが織り込み済みの設計なので、バッテリーは前後アクスル間の床下に配置でき、荷室容量や前後重量配分への悪影響が抑えられている。液冷式リチウムイオンバッテリーの重量は457kgで、空車重量は1.8トンをわずかに超える額面がスペック表に記されている。ただし、テスト車での実測値は、逆に辛うじて1.7トン台に収まっていた。
ボディサイズはCセグメントハッチとミディアムSUVの間といったところで、それを考えればきわめて重い。それだけに、キアがそのウェイトを楽に動かせるだけのモーターを積み忘れなかったのがありがたい。固定レシオで前輪を駆動する交流同期モーターは、204psと 40.2kg-mを発生するという。この数字通りなら、パワー・ウェイト・レシオはセアト・アテカ1.5TSI FRを凌ぎ、それにやや劣るハッチバックよりトルク・ウェイト・レシオも良好だということになる。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラットで、リアはマルチリンク。ホイールは17インチ、タイヤは215セクションが唯一の設定で、昨年テストしたヒュンダイ・コナ・エレクトリックと同サイズだが、メイクスはコナがネクセンだったのに対し、こちらはミシュランだ。ヒュンダイのグリップやトラクションは疑問の残るものだったが、タイヤ銘柄の変更で改善されただろう。それもテストで検証したいポイントだ。
e-ニロでは、HVやPHEVより静粛性向上が図られている。AピラーとBピラーには遮音材が追加され、フロントサブフレームの遮音性も高めるブッシュを使用。エンジン音がなくなった分、風切り音やロードノイズが耳につくようになるのを考慮した対策だ。