ロードテスト マセラティ・レヴァンテ ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2019.05.19 11:50 更新 : 2019.06.05 19:05
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
レヴァンテSのシャシーとアダプティブダンパー、エアスプリングは高いグリップレベルや立派なボディコントロール、ときとして勇気付けてくれるような手触りを示すステアリングをもたらす。だが、それらが生み出すスポーティさもハンドリングのバランスも、平均的な大型SUVのレベルを上回る程度でしかない。
つまりこのセグメントにおいて、現状の投資だけでは、どんなものであれ2016年に登場したばかりのクルマが、このクラスの一般的なスタンダードにすぐ後れを取ってしまいかねないのである。それはバンプの吸収や乗り心地の巧みさ、コーナリング中のスタビリティやスロットルオン時のハンドリングのバランスといった点においてだ。
レヴァンテは、必ずしも大きく的を外しているわけではない。にもかかわらず、ポルシェ・カイエンやレンジローバー・ヴェラール、アウディQ8などに乗った後では、レヴァンテの振る舞いに強く感銘を受けることはありそうもないというのが現実だ。ライバルに比べ、軽くも、小さくも、鋭くも、俊敏にも感じられず、ほかのクルマのように飛ばそうという気にはなれないのである。
このクルマのエアサスペンションは、速度に応じて連続的に車高を調整するが、コンフォートモードではゆったりした柔軟さをみせはじめる。このモードは限定的な成果しかないが、こういうときには選びたくなる。ただし、横方向のボディコントロールが多少は犠牲とされ、バンプを超える際には気まぐれなところがやや感じられ、素早くコーナリングすると予想以上にロールするようになる。スカイフックダンパーをスポーツモードに切り替えると、ボディコントロールは改善され、当初はかなり軽かったステアリングの手応えが増す。しかし、乗り心地は明らかにしなやかさや落ち着きが目減りし、ときに不安定になる。
操作の手応えやハンドリングの精確さ、乗り心地の追従性が、英国の道路にマッチしていることは、さまざまなシステムやメカニズムが寄与した結果だろう。とはいえ、現状のチューニングでは全面的に享受することができない。しかも、このクルマのサスペンションに用意されたモードの機能ぶりは、とても満足行くものではない