フェラーリ・モンディアル 2+2にV8エンジン 現代にはない上品さ

公開 : 2019.05.16 08:40  更新 : 2020.12.08 10:40

北米を意識したV8エンジン

1980年に登場したモンディアル8は、ボディの防錆処理もしっかり施され、フュエル・インジェクションとコンピュータ診断を行うダイアグノーシスを備えており、まさに新時代を迎えたフェラーリによる新モデルだった。またこのモンディアルは、V8エンジンを搭載したクルマとして、328など数字ではない、単語の名前が付けられた初めてのモデルでもあった。

モンディアルとは、1950年台初めに存在した4気筒エンジンを搭載したスポーツカー、フェラーリ500に付けられていた名称で、イタリア語では「世界」や「国際的」といった意味を持っている。恐らく、北米を中心に、世界中の市場を視野に入れたフェラーリだということを、表現したかったのだろう。

12気筒のモデルは燃費が悪く環境負荷も高く、特に米国では8気筒モデルの重要性が増していた時代。フェラーリの総生産の35%が米国へと輸出する中で、その内の75%がV8エンジンモデルを占めていた。現実社会ではフェラーリであってもライバルとのシェア争いに迫られるということを、308GT4の人気からフィアットの関係者は実感することになったのだ。

1969年にフェラーリはフィアットの傘下に入るが、実際マラネッロの経営に深く関わるようになるまで10年ほど要しており、モンディアルはフィアットの強い影響を受けた初めてのモデルだと考えてもいいだろう。その結果、市場主義的な要素が強く求められ、レーシングカー・デザイナーにとっては欲求不満の溜まるクルマだったかもしれないが、ユーザーにとっては望ましい傾向だったといえる。

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