フェラーリ・モンディアル 2+2にV8エンジン 現代にはない上品さ

公開 : 2019.05.16 08:40  更新 : 2020.12.08 10:40

フェラーリ濃度は充分に濃い

そんなモンディアルだが、比較的燃費の良いローカロリー・フェラーリでありながら、跳ね馬のエッセンスは充分に濃い。チューブラー・シャシーにオープンゲートで切られた5速マニュアル。ツインカムの3ℓ V8エンジンをミドに縦置きし、電子制御されるインジェクションと点火システムを備えていた。

半面、最高出力は217psしかなく、108kgも軽量なうえにウェーバーキャブで武装された先代の308GT4より、36psもパワーダウンしていた。0-96km/h加速は、活発とはいいにくい8.5秒で、最高速度は233km/hだった。しかも燃料の都合で米国での最高出力はさらに低く、わずか207psとされていた。

だが忘れてはいけないことは、初期型でも200km/hの巡航走行が可能で、4人が乗車でき、インテリアの質も当時のフェラーリとしては最も優れていたということ。車内は明るく、風合いのよいコノリーレザーで覆われ、フェラーリとしては初めて、スパナを使わずステアリングの角度も調整が可能だった。集中ドアロックに充分機能するエアコンも装備され、BMWのオーナーでも違和感を感じない、デジタルシステムにメンテナンスの警告灯を備えていた。

製造はイタリアのカロッツェリア、スカリエッティ社で、デザインを手がけたのはピニンファリーナ社のデザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティ。フェラーリ・デイトナもデザインした彼だが、1980年当時の年齢は42歳ながら、モンディアルは既に彼が手がけた8台目のフェラーリとなっていた。

手始めにフィオラヴァンティは、ベルトーネ社がデザインした1970年代のフェラーリ308GT4を分析し、例え+2のリアシートとはいえ、充分な空間確保にはホイールベースを最低でも4インチ(101mm)伸ばす必要があると結論付ける。その結果、モンディアルの全長は308GTBと比較して、13インチ(330mm)長く、全幅は3インチ(76mm)広く、全高は(127mm)高くなった。ボディは主にスチール製ながら、フロントノーズやエンジンカバー、ドアなどはアルミニウムが用いられた。

ボディの内側には、補強リブが入りボックス状に組まれたスチール構造により、剛性はGT4よりも向上。さらにボルト数本を外すことで、エンジンとギアボックスを車体から下ろすことが可能で、整備性も大きく改善していた。

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