フェラーリ・モンディアル 2+2にV8エンジン 現代にはない上品さ

公開 : 2019.05.16 08:40  更新 : 2020.12.08 10:40

徐々に進化し最終型では304psを獲得

いま見るとプロポーションは美しく、全長の割に幅の広いボディを持ち、それなりの大きさのリアシートにラゲッジスペースをミドシップで叶えるという、頭が痛くなりそうなパッケージングを軽妙なデザインでまとめている。高い車高とキャビンフォワードなドライビングポジションは、従来のフェラーリのイメージとは一線を画しており、どのような市場評価を得られるか、掴めない部分はあっただろう。

モンディアル8の販売は当初好調ではなかったようだが、オーナーは実際乗ってみると気に入る傾向は高かったと、当時マラネッロの販売代理をしていたトニー・ウィリスは話している。「わたしはモンディアルが好きですが、後期モデルの方がずっと良いと思います。初代の「8」は電気系統が弱く、ダッシュボードの維持も難しいのです」 彼は現在、英国のフェラーリ専門サイトの管理人を勤めている。

発表から12年間を掛けて、フェラーリはモンディアルのパワーを増強し、性能を高めていった。1982年には気筒あたり4バルブを採用したエンジンを搭載した、モンディアルQVを発表し、パフォーマンス不足を改善する。排気干渉が起きないシングルプレーンクランクを採用し、32バルブとなったV8エンジンは243psとなり、当時の量産自然吸気エンジンとしては最も高い出力を誇った。その後1985年には、ボアとストロークを大きくし、3185ccまでスープアップ。最高出力を273psまで高められたモンディアル3.2が登場する。当時はクワトロバルボーレと呼ばれていた。

その前年の1984年には、フェラーリ308や328GTSの好調な販売に押され、モンディアル・カブリオレも発表された。これはデイトナスパイダー以来のオープンモデルで、モンディアルの各グレードの中でも一番の成功を納めることになる。発表直後から好調で、クーペボディの販売台数を追い越すことになった。

最終モデルはモンディアルtと呼ばれ、3.4ℓのエンジンから304psを発生した。エンジンの搭載位置は5インチ(127mm)下げられ、向きも90度回転され縦置きに搭載。ギアボックスは横置きのままとされ、「t」の頭文字はこの「transversale:横置き」から来ている。このレイアウトは当時で20年近く前のF-1マシンから発想を得たもので、重心高を下げると同時に、クラッチの整備性を高める役目も果たしている。

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