最古のポルシェ タイプ64、出品 どんなクルマ? 予想落札価格22億円

公開 : 2019.05.19 11:10

レースのために 苦難の歴史

サスペンションやドライブトレインはベースとなったKdFワーゲンそのままだったが、タイプ64では軽量なアルミニウム製ボディを採用するとともに、タイヤは取外し可能なアルミニウム製パネルによって完全に覆われていた。

さらに、フロントに2本のスペアタイヤを収納すべく、燃料タンク位置をかなり後退させており、その結果、パッセンジャーシートはドライバーズシートよりも後ろ、車両センター近くに置かれている。

エンジンはKdFワーゲンと同じ985ccユニットが搭載されていたが、パワーが32psまで引き上げられるとともに、最高速は173.5km/hに達していた。

レースのために生み出されたものの、1939年8月、最初の1台が完成した直後に第2次世界大戦がはじまったために、ベルリン-ローマ・ラリーはキャンセルされ、タイプ64のデビューはお預けとなっている。

この時点で、計画はフェルディナントから息子のフェリーに引き継がれ、1939年12月に2台目が、1940年6月には、事故でダメージを負った1台目のシャシーを使った3台目が完成しており、今回オークションに出品されるのはこの3台目の車両となる。

ポルシェ家がプライベートユースのために所有し続けていたこの個体は、オーストリアにある彼らのガレージで2台目とともに保管され、もっぱらフェリーとフェルディナントがそのステアリングを握っていた。

だが、残念ながら2台目のタイプ64は戦争で失われ、生き残った3台目は、戦争終結まで米軍の基地内で使用されることとなった。ルーフが取り払われたこの車両は、実質的に乗りつぶされ、そのまま放置されている。

それでも、車両自体に大きなダメージはなく、1946年にフェリー・ポルシェが自身の会社を立ち上げると、自らの手で、このクルマのフロントに「PORSCHE」のエンブレムを取り付けている。

翌年、フェリーは若き“ピニン”ファリーナに車両のレストアを依頼しており、完成から約10年を経て、ようやくレースへの参戦準備が整うこととなった。

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