WRCで最も過激だった1980年代 8車8様 グループBの暴れ馬
公開 : 2019.05.19 10:10 更新 : 2020.12.08 10:40
プジョー205 T16 EVO1(1985年)
レイアウト:ミドシップ・四輪駆動
エンジン:1775cc直列4気筒ターボ
最高速度:249km/h
アウディ・クワトロの方が勝利数では多いものの、プジョー205 T16はグループB時代において最も成功を収めたクルマだといえるだろう。何しろ、ティモ・サロネンとユハ・カンクネンのコンビによる、1985年と1986年のタイトルが輝かしい。205 T16との結びつきが強いドライバーには、フィンランド人のアリ・バタネンもいる。彼は1984年、初めてのWRC1000湖ラリー(現在のラリー・フィンランド)で勝利している。
今回レース・レトロに参加した205 T16は、かつてプジョーのワークスドライバーだった、ケビン・ファーバーが12年間所有しているクルマ。「私は幼い頃からモータースポーツに関わっていました。WRCに5シーズン参戦する以前は、ナショナル・カートのチャンピオンでした。他にも多くのイベントで勝利を収めてきましたが、グループBのマシンを運転したときのスリルは、夢に描いたようなラリーマシンに乗った熱い記憶として、消えることはありません。小さい頃から、乗ってみたいと思っていたんです」 と話すファーバー。彼はまた、グループAで自身がドライブした205も所有している。
このグループBの205 T16は、1985年に、米国のプライベート・レーサー、ジョナサン・ウッドナーのためにプジョー・スポーツUKが作ったクルマ。彼は、カンクネンがファクトリー・チームとしてエントリーしていた1985年から86年にかけて、USラリー・チャンピオンシップに参戦している。
205 T16は、標準の205の3ドア・ボディを3分割にカットし、ボディ後ろ側に、バルクヘッドと鋼管パイプに鉄板を組み合わせたスペースフレームを取り付け、エンジンとトランスミッションをミドシップしている。エンジンはオールアルミ製で、16バルブのツインカム。トランスミッションはシトロエンの軍用トラックのものを流用している。スペースフレームは、グラスファイバーとカーボンファイバーの複合素材によるボディパネルで覆われていた。ボディ前半も同様のスペースフレームが取り付けられている。つまり、205 T16のシルエットはプジョー205ではあるものの、中身はまったくの別物といって良い。
バタネンのファンだというファーバー。「バタネンは長年、わたしのヒーロだったんす。1989年のとある授賞式で彼から直接賞を受け取ってからは、その思いは一層強くなりました。彼の活躍をずっと見てきましたし、この怪物のT16を駆って5回もWRCに参戦し、1984年から85年にかけては優勝争いをしていたんですから」