WRCで最も過激だった1980年代 8車8様 グループBの暴れ馬
公開 : 2019.05.19 10:10 更新 : 2020.12.08 10:40
アウディ・クワトロ・ターボ(1983年)
レイアウト:フロントエンジン・四輪駆動
エンジン:2144cc直列4気筒ターボ
最高速度:247km/h
アウディ・クワトロは、いわゆるゲームチェンジャーだった。レギュレーションの変更で四輪駆動の参戦も認められた当時は、機構が複雑過ぎ車重もかさむことから、競争力では劣ると考えられていた。しかし、アウディ・クワトロがヨーロッパ・チャンピオンシリーズのオーストリアラウンドで初勝利を収めると、その考えは誤りだったことを知らしめた。
加えて、ドライバーのミシェル・ムートンはすでに世界的に活躍していたラリードライバーだったが、WRCで優勝を収めた初めての女性だったこともあり、大きなPRにもつながった。ラリードライバーのヴァルター・ロールは、四輪駆動のクルマに対応するドライビングスキルは、男性のドライバーよりも彼女の方が上手だったとした逸話も残っている。
レース・レトロに参加した車両は、ニック・バーリントンが所有するもの。息子のトムと一緒に競技に出場しているそうだ。「私はこのクルマをロード―カーとして2004年に購入しました。その時はナンバーが付いておらず、ガレージの外に出られるようになるまで10年ほどかかりました。2005年にレストアを始めて、完成したのは2013年でした」 と振り返るニック。ロッキンガムのショートステージを走ると、その勇姿見たさに観衆が集まってくる。
初めに生まれたクワトロは、ロードカーをベースにしたマシンだった。ハンヌ・ミッコラドライブした1981年のモンテカルロ・ラリーでは、すべてのステージでライバルより60秒前後も速く走行。結果リタイヤに終わったものの、その圧倒的な強さを見せつける形となった。その翌年クワトロ・ターボによって、ヴァルター・ロールとアウディは、ドライバーズ・タイトルとコンストラクターズ・タイトルの両方を獲得することになる。