試乗 1954年式 デイムラー・ドーファン 英国上流階級の悲喜こもごも
公開 : 2019.05.20 07:10 更新 : 2020.12.08 11:10
いまは安心できるオーナーのもとに
足元の左側のペダルはクラッチではなく、シフトチェンジのためのものだと意識していれば、デイムラーを普通に運転することができる。発進時には1速か2速を分度器のようなセレクターで選び、左のペダルから足を離してハンドブレーキを緩めれば、ドーファンは進み始める。クラッチが滑るような感覚はない。
走り始めたら、次に入れたい段数をレバーで選択し、変速したいタイミングで左側のペダルを踏み込んで離すと、その段数に変速される。一度慣れてしまえば、シフトアップもシフトダウンも、思い描く好みの速さでスムーズに行うことができる。
ただし、ペダルを充分強く踏み込まなかった時に起きる、通常よりもペダルのキックバックの大きい「ミス・ニュートラル」には気を付けなければいけない。当時のデイムラーの他のモデルと同様に、ドーファンも王侯貴族が楽しんだクルマ。かつての偉人が楽しんだように、ゆっくり走るのが良いだろう。
最後になったが、現在のオーナーは英国西部のサマートンに住むポール・チェンバレン。デイムラーのコレクターである彼は、10年ほど前にBCA(英国カー・オークション)でドーファンを見つけ、手頃な価格で入手したそうだ。恐らく1万から12000ポンド(142万〜170万円)程度で手に入れたと思われる。「スタイリングが気に入りました。クルマが、わたしをお家に連れて行ってと話しているようでした」 と振り返るチェンバレン。浪費癖のなさそうな、安心できるオーナーの手に渡って良かったと思う。