初試乗 ポルシェ911スピードスター 510psの4ℓ自然吸気 受け継がれる哲学
公開 : 2019.05.27 10:10 更新 : 2019.05.29 15:03
夢に描いたような一糸乱れぬコーナリング
ボディ上部を結ぶ屋根がなくなったことによる、剛性への影響も気になるところだとは思うが、心配ご無用。さすがに本家GT3と乗り比べてしまえば、僅かな緩みに気づくかもしれない。しかし一般道を走っている限り、サーキットも許されるミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤが強烈なグリップを生み出し、スピードスターは一糸乱れずカーブを曲がっていく。
まるでドライバーの直後にエンジンが搭載されているのではないかと勘違いするほど、鮮烈なコーナリングを披露する。折り畳まれたソフトトップの、さらにその後ろにエンジンがぶら下がっているとは信じられない。
4輪操舵システムは、低速域ではやや過敏すぎる設定にも感じられるし、GT3よりもどこかナーバスな印象もある。だがそれは重箱の隅の話。概して非常に鋭敏で、意のままに操ることができるはず。スピードスターは、プリミティブでシリアスな、快音を響かせる極めて高次元のパフォーマンスを備えたスポーツカー以上のクルマだといえる。夢に描いたようなクルマが、現実のものになったようだ。
もちろん、見た目からして、実用性の面で多少の我慢が必要なことはおわかりだろう。個人的には後方視界の面でも優れ、利便性でもまさるクーペボディのGT3の方が好みではある。風切り音も静かだし、包まれ感のある車内は、運転に陶酔できるような雰囲気もある。
誤解しないでほしいのは、1日中スピードスターを運転しても、不快に感じることはないということ。スピードスターという演出が、嫌いでなければ。ただし、運転席直後にそびえるバットレスのバルクヘッドが視野を狭めているし、インテリアも実際以上に狭く感じられてしまうことは、触れておくべきだろう。