AUTOCARアワード2019 五つ星モデル部門 珠玉の3台を表彰
公開 : 2019.06.01 07:50 更新 : 2019.06.03 08:54
マクラーレン・セナ
コンセプトそのままの希少な存在として、800psのパワーと75万ポンド(1億393万円)のプライスタグを掲げた「アルティメットシリーズ」のサーキットスペシャル、マクラーレン・セナは、ロードテスター羨望のモデルだ。
求められる役割が多ければ多いほど、それを達成するのは困難になるのだから、さまざまなミッションを与えられ登場したニューモデルを正しく評価するのは、ときに非常に難しい。だが、セナに与えられたミッションは非常に明快だった。
マクラーレンは、コストの制約なしに、最高の技術と経験を使って、もっとも刺激的な最速のサーキットマシンというだけでなく、モータースポーツライセンスを持たないひとびとでも、公道で十分に楽しむことのできるモデルを創り出そうとしたのであり、彼らの設定したこのミッションを理解し、そのためにウォーキングのエンジニアたちが傾けた情熱を感じることこそ、セナを正しく理解するために必要なことだ。
初めからセナは強烈な印象を残す。スイリングは凶暴ともいえるほど攻撃的なもので、そのすべてが単なるデザインではなく、機能を最優先に考え抜かれており、ひとびとにどう見られるかよりも、クーリングやダウンフォース、空力バランスを優先している。
その大柄なボディ、奇妙にも見えるフロントスプリッターとリアディフューザー、可変式ウイングには、思わず息を飲むが、それも、こうした巨大な空力パーツが、レースモードで発生させるダウンフォースは、全体の半分にも満たないと聞かされるまでだ。249km/hで発生する、800kgというとてつもないダウンフォースの半分以上は、グラウンドエフェクトからもたらされている。
こうしたデザインとエンジニアリングのすべてが、サーキットのためであり、マクラーレンのようなメーカーが創り出したこのクルマであれば、どんなサーキットでも、その実力を遺憾なく発揮することができるだろう。
だが、昨年のある日、われわれがハンドリングテストに使用しているサーキットで、さらなる衝撃を目の当たりにしている。
わずか1周65秒ほどのサーキットで、ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテが持っていたコースレコードに、セナは1.5秒もの大差をつけたのであり、それまでコンマ数秒の記録更新が当たり前とされていたところ、もっとも超えるのが難しいだろうと思われていたタイムを破って、セナが打ち立てた新たな記録は、1分3秒8というものだった。