AUTOCARアワード2019 ゲームチェンジャー部門 数々のモデルが時代を変革
公開 : 2019.06.01 09:50 更新 : 2021.03.05 21:37
メルセデス-AMG CLS 53
例えメルセデス-AMGのような会社であっても、自らのやり方を変えなければならない時がある。
それでも、V8に替わる、魅力的な直列6気筒ハイブリッドエンジンが開発され、そのエンジンが、過去12カ月でテストしたなかでもっとも革新的なパフォーマンスモデルとして評価されるべき、現行メルセデス-AMG CLS53に積まれるなど、滅多にあるようなことではない。
ご記憶かも知れないが、数年前、メルセデス-AMGからは、V6ターボエンジンを積んで、43のモデル名を与えられた、パフォーマンスサルーンとクーペ、コンバーチブル、そしてエステートの一団がデビューしている。
その目的は、V8ほどのコストとハードコアなキャラクターを望まない顧客向けに、本物のAMGモデルを味わってもらうことにあり、確かに真のAMGではあったものの、その販売は、期待されたほどAMGの顧客層を広げることは出来ず、結局のところ、43とは、AMGが全力を傾けて創り出したモデルではなかった。
だが、CLS 53は違う。現代的なフィールと速さを併せ持つ、E63 Sワゴンのような優れたグランドツアラーとして、このクルマのすべてを真のパフォーマンスカーと呼ぶことができる。
通常の大径タービンと、電動小型ターボのふたつを備えた直列6気筒エンジンは、どの回転域からでも十分なトルクを発生させ、さらに低回転域では、電気モーターからの25.4kg-mのトルクがプラスされることで、CLS 53は素晴らしい力強さを発揮し、どこからでも、ドライバーの求めに見事なスロットルレスポンスで応えてくれる。
このクルマのエンジンを高回転域まで引っ張れば、大排気量モデルから乗り換えたドライバーも満足させる、まるで剃刀のように切れ味鋭い、本物の素晴らしいサウンドを楽しむことができる。
さらに、路上におけるパフォーマンスも十分なものであり、スムースなギアシフトを伴うこのクルマの48km/hから113km/hへの加速タイムは、2011年にテストしたV8のCLS 63 Sに遅れること、わずか0.1秒というものだった。
ハイブリッドの採用は、AMGにとって決して簡単な決断ではなかったに違いない。数年前であればAMGトップのだれもが、こうした技術について、すでにかなりの期間、真剣に議論してきたと答えただろうが、ハイブリッド化とは、長きにわたってAMGを象徴してきた、強烈で刺激的なV8の魅力を損なうリスクを伴うものでもあった。
確かに、CLS 53には、V8モデルほどの威厳や速さはないかも知れないが、それも、その見事なレスポンスとリラックスできる落ち着いたハンドリング、ドライバーアピール、さらには素晴らしい長距離ツアラーとしての資質が十分に埋め合わせており、さらに、ショールームで肩を並べるV8サルーンを引き立たせる役割も完ぺきにこなしている。
CLS 53とは、少し目新しく、少し違ったモデルであり、それがこのクルマの魅力なのだ。