AUTOCARアワード2019 ゲームチェンジャー部門 数々のモデルが時代を変革
公開 : 2019.06.01 09:50 更新 : 2021.03.05 21:37
キア e-Niro
昨年のAUTOCARアワードでも、キアのモデルはゲームチェンジャーに選ばれているが、それはまったくタイプの異なるクルマだった。トップグレードのGT-Sであれば、370psのパワーとリア駆動、そしてツインターボエンジンが手に入るスティンガーは、今年の受賞モデルとは、これ以上ないくらい対照的な存在と言えるだろう。
キアe-Niroのフロントには、素晴らしい出来栄えのV6エンジンなど積まれておらず、実のところ、このクルマのどこにも一般的な内燃機関など存在していない。e-Niroはキア初の専用EVであり、このクルマのプラットフォームは、最初から電動、プラグイン、そしてハイブリッドパワートレイン専用に創り出されたものだ。
もちろん、すでにEVなどありふれた存在であり、e-Niroが2019年のゲームチェンジャーに選ばれたのは、このクルマがキア初の専用EV(ソウルEVは既存モデルをベースにしたモデルだった)だからというわけではない。このクルマがゲームチェンジャーに選ばれた理由は、EV市場全体に及ぼす、その破壊的な影響力にある。
e-Niroは3万5000ポンド(485万円)以下の価格を実現しつつ、64kWhのバッテリー容量を確保して、1回の充電で、悠々と230km程度の航続距離を可能にしているのだ。わずか数年前、これほどの航続距離を持つEVはテスラだけであり、その価格はこのクルマの2倍にも達していた。
つまり、e-Niroは、昨年のゲームチェンジャー・アワードを受賞した日産リーフが起こした、EVの民主化が進展したことを象徴するモデルであり、さらに、それをドラスティックに推し進めているのだ。2018年には、リーフの手ごろな価格と、274kmという実際の航続距離が評価されたのであり、e-Niroは航続距離をさらに97km延ばすことで、わずか12カ月で、どれほど技術が進歩したかを証明している。
だが、この航続距離と手ごろな価格という組み合わせだけが、e-Niroが2019年のゲームチェンジャーに選ばれた理由ではない。より重要なのは、キアの考え抜かれたパッケージによって、このクルマが路上での見事なマナーと実用性とを見事に両立しているということであり、ヒュンダイ・コナ・エレクトリックもおそらく同じようなパーツを使って、同じような航続距離と価格を実現しているにもかかわらず、そのキャビンスペースはe-Niroに劣り、落ち着きやグリップ、安定性といった点で、その乗り心地とハンドリングもe-Niroのレベルには達していない。
2019年、電動化を阻む理由は急速に力を失っているようだ。e-Niroの一時的な売り切れが示しているのは、多くのひとびとも同じように感じているということかも知れない。