AUTOCARアワード2019 イシゴニス賞 ディーター・ツェッチェ
公開 : 2019.06.01 18:50 更新 : 2019.06.03 08:54
答えは必ず見つかる EQCの持つ意味
欧州最後の業務として、ツェッチェは英国ミルトンキーンズにあるダイムラーの拠点へと出張し、ディーラー関係者との面会や、スタッフとの質疑応答、さらには将来に関する広範なスピーチを行っているが、空港へと戻る1時間をわれわれのために確保してくれていた。
ツェッチェはいつもどおりのリラックスした様子で、カメラマンが撮影準備を進めているあいだ、1990年代に米国のモーターショーで、カウボーイハットを被って彼が演じた「Dr. Z」というユニークなキャラクターについての雑談をしていたのだが、これは、疑い深い米国の記者たちに、ビッグスリーの一角とダイムラーとの繋がりを売り込むために、考え出されたものだったという。
確かに、その狙いは成功したようだ。当時を思い出しながらツェッチェはニヤリとしている。「楽しかった」と彼は言う。「ですが、アライアンスの将来が分かっていれば、あれほど一生懸命に取り組むことはなかったでしょう・・・」
現在の課題について話を聞くべく腰を落ち着けると、ツェッチェは途端に「楽天家」の顔を見せ、それを証明するように将来への希望を語っている。「いま直面している大きな課題というものは、一方で最大のチャンスでもあり、移動のあり方を変え、新たな夢を創り出すとともに、ダイムラーが、次世代の顧客や従業員、シェアホルダーといったひとびとからの要求に応えられる企業となるよう、変革を促すものです」と彼は言う。
楽観的でありつつも、常にワードワークが求められていると彼は言う。「偉大なチームと、偉大なパートナーシップ、そして優れたイノベーションが、素晴らしいアイデアをもたらすのであり、そうしたアイデアさえあれば、ほとんど不可能などありません」と彼は話す。「まだ、解決方法が見つかっていない数多くの大きな問題がありますが、答えを見つけ出すことはできると信じています」
販売戦略として、メルセデス・ベンツが真剣に真の電動化に向けた取り組みをスタートさせたのは、ツェッチェと彼のチームがおよそ2年にわたって開発を進めてきた、EQCのプロダクションモデルが公開された昨年9月のことであり、計画では、ツェッチェCEO退任の1カ月後となる、今年中頃には公道デビューが予定されている。
EQCは、急速にラインナップを広げつつあるメルセデスEQシリーズの第一弾であり、この新型モデルの重要性について、ツェッチェは特に力を込めて語っている。「キャリアのなかでいくつかの忘れられない瞬間というものがありますが、ゲームチェンジャーと呼べるほどの存在は稀であり、このクルマがまさにそんな1台なのです」