AUTOCARアワード2019 デザイナー賞 ローレンス・ヴァン・デン・アッカー

公開 : 2019.06.02 07:50  更新 : 2019.06.03 08:54

変化が必要 大きなチャンス

ルノーの見事なコンセプトモデルと、まったくそれとはかけ離れた市販モデルとの違いを批判するひとびともいた。

「変化が必要なことは明らかでした」とヴァン・デン・アッカーは話す。「わたしは新参者であり、時間も限られていました。ルノーの本質を理解するために時間をかけているような余裕はなかったのです。何かが必要でしたが、同時に、ハネムーン期間があるだろうとも思っていました。それでも、金融市場の状況を考えれば、それも決して長いものではないと思っていましたが、一方で、最初のアイデアが受け入れられないことなどないことも、経験上分かっていました」

「このチャンスを、もっとも早くインパクトを与えることのできるコンセプトモデルという形で、最大限活用しようと決めました。新たな方向性と、新たなデザインのDNAを示す必要があったのです。さらに、将来に対する自信を表現する必要もありました。その結果、誕生したのがデジールと呼ばれた2シーターのコンセプトスポーツカーであり、就任した最初の年の後半には、パリのモーターショーで公開することができたのです」

デジールは大きな注目を集めることに成功している。それまでのルノーの量産モデルとはまったく異なる、美しく、現代的なクーペモデルであり、繊細な曲線と人体のような滑らかなボディが特徴だった。このコンセプトモデルとともに、ヴァン・デン・アッカーは彼の「サイクル・オブ・ライフ」というアイデアを明らかにしており、このクルマは「愛」を象徴するものだと彼は話している。


「驚きをもたらすために、デジールは必要なモデルでした」とヴァン・デン・アッカーは言う。「理知的なモデルではなく、単に美しいモデルであれば良かったのです。チームには、ふたりのための豪華なデザインにして欲しいと頼みました。そして、彼らからの回答がこのモデルだったのです」

なかには、危機にあって、こんなエキゾチックなコンセプトモデルに何の意味があるのかと批判する声もあったが、ヴァン・デン・アッカーは、デジールと、将来的なルノー製モデルの関連を示すことで、そうした声を抑えむことに成功している。

「ドイツ車はまさにゲルマン的です」と彼は説明している。「そして、フォードやヒュンダイは非常に動的なデザインを持っています。ですが、主要なモデルのなかで、かつてはアルファ・ロメオフィアットが得意としていた、官能的でゴージャスなデザインというものが失われており、われわれにとっては大きなチャンスでした」

「幸いにも」と、ヴァン・デン・アッカーは言うが、彼がルノーのデザイントップに就任した時、4代目クリオの開発は初期段階にあり、まさに、ルノーの新たなデザインを表現するには完ぺきなタイミングが揃っていた。デジールのコンセプトは、ルノーのベストセラーであるクリオで最初に試されることで、まさに最高のテストとなった。「人気モデルになるといのうは大変なことです」と彼は言う。

ポルシェのデザインだけをやりたがるようなひとびともいますが、最初にクリオで試すことができたのは幸いでした」

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事