メルセデス・ベンツSL350ブルー・エフィエンシー
公開 : 2012.03.30 18:15 更新 : 2017.05.13 12:53
■どんなクルマ?
最新の第6世代のメルセデス・ベンツSLでも、大部分の英国人が選ぶだろうモデルがSL350だ。3.5リッターののV6エンジンは、429bhpを発揮する4.7リッター・ツイン・ターボのV8よりも低い302bhpのパワーで、0-100km/hもV8の4.6秒よりも遅いが、それでも十分に早い5.9秒という数値をマークする。また、重要なのは82,000ポンド(1,072万円)というプライス・タグが付けられたV8よりもかなり安い価格で手に入るということだ。
V8よりもシリンダーが2本少ないということも重要なことだ。それは何故か。もともとのSLの意味を思い出して欲しい。SLのLは「Leicht」、つまり軽いという意味を持つ言葉の頭文字なのだ。鉄からアルミニウムへとボディの構成が変わったことで、前モデルよりも140kg軽くなり、その軽さは0-100km/h加速で前SL350よりも0.3秒も早いタイムをもたらすことに成功した。また、Cd値0.27というエアロダイナミクスに優れたボディは、高速域においてエンジン・パワーを最大限活かすのにも寄与している。更に、その固く造らたボディ・シェルは、今までのどの2シーター・ドロップヘッド・ロードカーよりも優れた剛性を持つ。
14.7km/lという燃費は、30%少なくなったエンジン・キャパシティによるところが大きい。それと共に、新たに採用されたスタート・ストップ・システムと7速オートマティック・ギアボックスも燃費向上に貢献している。また、CO2排出量もV8の212g/kmから159g/kmと、驚くべき低減がされている。
■どんな感じ?
例えこのクルマに初めて乗ってラウンダバウトに入っても、その驚くべきシャープなステアリングと、印象的に巧みなターン・インに驚くことだろう。その感覚はスポーツ・ライトと呼ばれている今までのどんなスポーツカーでも味わえなかったセンセーショナルなものだ。もちろん、その今までのモデルには従来までのメルセデスの各モデルも含まれる。そのドライビング・フィールは、より大きなSL500よりも明らかに機敏だ。
それでは、V8ツイン・ターボのSL500に対して、パワーが足りないことは許せるのだろうか。その答えは「イエス」だ。センターコンソールにあるスポーツモードを選択する「S」ボタンをプッシュすれば、素晴らしい電子ダンバーのセッティングが変更される共に、そのパワーを味わうことができる。スポーツ・モードでは、シフトタイミングが延ばされ、必然的に低いギアが選ばれるようになる。また、キックダウンの際も一気に2速飛び越えるほどの姿勢を見せる。
例えあなたがビギナーであっても、「無感動な態度を放棄」した6気筒のSLは、かなりのスピードでコーナーをアタックすることを推奨するかのようだ。それは、クイックなステアリングによるところも大きいが、固いアンチ・ロールバーを持ったサスペンションによるところも大きい。恐らく自分が想像するよりも素早く完成されたコーナリングが味わえるはずだ。
また、例え速度がどの領域にあっても、ベンツの鼻先は、その低い重心によってロールが抑えられ、驚くほどニュートラルな姿勢でコーナーを抜けていく。コーナー途中でスロットルをあけると、わずかにアンダーステアが顔をのぞかせるが、その時点であなたはこのクルマを賢くドライブしようとすることを忘れてしまっているはずだ。素晴らしいシートに包まれ、風の巻き込みのないコクピットに身を置き、そして遥か彼方に見える風を感じたドライブが楽しめる。
余裕があるのであれば、ルーフを閉めて走ってみて欲しい。そのフィーリングはSクラス・サルーンと同じぐらい文化的で、しばしば荒さが目立つEクラスよりもしなやかな乗り心地を示す。
■「買い」か?
疑いもなく機敏なオープントップの2シーターのグランド・ツアラーだ。オールラウンダーのジャガーやマセラティ・グランスポーツは敵ではない。911はよりハードなドライビングが可能だが、その一方で、常にハードなドライビングが要求される。
SL350は、どんなGTやラグジュアリー・ロードスターやスポーツカーよりも3倍は楽しいクルマであり、高価なSL500よりも価値があるように思う。
(リチャード・ブレムナー)
メルセデス・ベンツSL350ブルー・エフィエンシー
価格 | NA |
最高速度 | 250km/h(リミッター) |
0-100km/h加速 | 5.9秒 |
燃費 | 14.7km/l |
Co2排出量 | 159g/km |
乾燥重量 | 1685kg |
エンジン | V6 3498cc |
最高出力 | 302bhp/5000rpm |
最大トルク | 31.8kg-m/3500rpm |
ギアボックス | 7速オートマティック |