AUTOCARアワード2019 モータースポーツヒーロー部門 ジョージ・ラッセル
公開 : 2019.06.01 10:50 更新 : 2019.06.03 08:54
ゼロからのスタート
ラッセルはそれでも笑みを絶やさない。「ゼロからのスタートです」と彼は言う。「F1へと上り詰めるためのひとつのステップではありましたが、いまは次の段階です。多くのドライバーはF1に到達したことで満足するかも知れません。確かに、F1デビューを果たして、天にも昇るような気持ちでないと言えば、それは嘘になるでしょう」
「ですが、満足してしまえば、次は過ちを犯すかも知れません。そして、その過ちに気づく前に、次のドライバーがやって来て、せっかく掴んだF1のシートを失ってしまうことになるのです。非常に厳しい世界です。F1のシートはわずか20しかありません。ですから、シートを失わないためには、シートを手に入れるよりも多くの努力が必要なのです」
だが、この大きな瞳をした、まるで少年のように見えるラッセルに騙されてはいけない。ジョージ・ラッセルはまったく油断などしておらず、この厳しいF1という世界に完全に順応している。若いF1ドライバーたちは、ひとつの目標に対するその驚くべき献身が、特徴とも言えるが、ラッセルはそのなかでも傑出した存在であり、それは、単にかれの身長が180cmを越えているからというだけではない。
これまでの実績以上に、ラッセルには何かがあると感じさせるが、それは、まさに彼がF1ドライバーになるために生まれてきたということかも知れない。
「わたしより11年早くカートを始めた兄がいます。彼がカートを始めたのは11歳の時だったので、まさにわたしはサーキットで育ったようなものです」と、ラッセルは言う。「ですから、カートを始めたのは自然なことでした」
「最初にカートに乗ったのは7歳の時です。誕生日に両親がカートを買ってくれたんです。その週末の土曜日、PFインターナショナルという地元のサーキットに行きました。すべてはここから始まったのです」
ジョージ・ラッセルに親近感を抱く理由のひとつが、そのどこにでもある親子の物語にある。「父がメカニックを務め、母がすべてのセッティングを小さなノートに記録してくれました」
「ラッキーだったのは、父が兄と一緒にわたしの面倒も見てくれたことです。兄はある意味実験台だったとも言えます。父がミスを犯すときは、必ず兄のマシンだったんです!」