試乗 アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スプリント ハンドメイドの不完全さもそのままに
公開 : 2019.06.04 20:10 更新 : 2021.02.02 12:51
ハンドメイドモデルを手に入れる巡り合わせ
会長へ選出されると、スウェーデンを含む、世界中のメンバーから電話がかかってきたそうだ。「2006年にスウェーデン・ヨーテボリに住むアレックス・リンドから電話をもらいました。極めて初期のスプリントを所有していて、どういうクルマなのか査定をして欲しい、という内容でした。わたしの見立てはかなり甘かったと思いますが、それから1年後に、再びアレックスが電話をくれて、クルマを売却したいと話してくれたのです」
話を聞いたグレゴリーは、アルファ・ロメオに詳しいクリス・ロビンソンと友人のサベージへ連絡し、現物を見るためにスウェーデンへと飛んだ。「クルマはアレックスの話していた通りのコンディションでした。1970年代に誰かがレストアに手を出したものの、クルマの価値を下げるようなことはされていませんでした。わたしは自他ともに認めるアルファ・ロメオ・フリークですが、このクルマの経歴を調べることはとても楽しい作業でした」
ボディの塗装を剥離すると、初期のハンドメイド・モデルだということは直ぐにわかったという。「ボディの鈑金加工を行っていた職人の技術はとても高く、しっかり時間も割かれています。ボディパネルは美しく整形され、滑らかに溶接されていました。ボディパネルはきれいに叩きだされているのがわかりました。記録として、すべてのボディパネルにマーキングをして、組み立てた手順も写真で撮影てあります」
ロンドンから南西に下がったオーバー・ウォロップという街にある、オールド・コーチワーク社のジョン・ホールデンが、ボディのレストアを引き受けた。しかし、オーナーのグレゴリーは腕の立つホールデンへ、当時の職人以上にボディをきれいに仕上げないよう依頼をした。また塗装を剥離するのに薬品に浸すのを嫌ったグレゴリーは、サンドブラスト処理(細かい砂を当てて表面を研磨する方法)を指定したそうだ。
「機械での量産モデルのスプリントとは違って、構造用メンバーが付いておらず、ボディは少し剛性が足りていませんでした。しかし、カロッツェリア・ベルトーネが仕上げたとおりに、可能な限りオリジナルの状態に近づけることを当初から決めていました。いま振り返ると、そのレストア作業は楽しくもあり、ストレスが溜まるものでもありましたね」