比較試乗 半世紀前のイタリア製スパイダー アルファ vs フィアット 乗って帰るなら?
公開 : 2019.06.17 17:10
サウンドが魅力のアルファ
キャビンも同様のテーマを踏襲している。ミニマリズムと言えるほどフラットな印象の車内は、装飾主義のアルファとは異なる上品で洗練された趣がある。メーターに描かれたイタリア語のスクリプト(Benzine、Acqua、Olio)、長目のクロームメッキのシフトレバー、そして浅い角度のステアリングが興奮をさらに高めている。
フィアットは明らかに大衆市場向けであるが、自らが高貴な出であることを上手に訴えている。このクルマであれば、フェラーリ275GTSを運転する自分を心に描くのにそれほど想像力を必要としない。少なくとも、エンジンを始動するまでは。
アウレリオ・ランプレディのツインカム4は、ベルトドライブのバルブギアを搭載した世界初の量産エンジンだ。試乗車のようにキャブレター搭載の1756cc仕様が、ちょうど良い性能だろう。ただ、このクルマは機敏で意欲的だが、アルファのように聴覚的なスリルを味わうことはできない。
フィアットから出るノイズも十分に心地良いのだが、アルファのツインカムの方が心のこもった歌を歌う。中毒性のある素晴らしい歌いっぷりは、アルファ・スパイダーの最大の美点であり、量産車とは思えないほどドライバーを虜にしてしまう。