「中国のイーロン・マスク」 Nio社CEOインタビュー 新たなユーザー体験重視
公開 : 2019.06.08 09:50
青空のために ユーザー体験が重要
EVメーカーを起業しようと決意したのは、2012年のことだったとリーは話す。「中国では酷い大気汚染が問題となっていました。もうすぐ子供が生まれるというタイミングだったので、この問題を放置しておくわけにはいかないと思ったのです」と彼は言う。だからこそNioの中国名は、「青空の訪れ」を意味するWeilei(蔚来)というのだ。
だが、Nioのアイデア自体は、中国における新車市場の爆発的な成長を背景に、2000年にリーがBitautoを創業したころにまで遡る。リーはこの急拡大する新車市場にあって、スマートフォン経由で、直接ユーザーに新車を販売することができると考えたのだ。彼に必要だったのは、そのための技術とインフラだけだった。「真に偉大なアイデアというものは、ときに時代に先行し過ぎているということがあります」と彼は話す。「時代が追い付くまで、18年も待ちました」
電動化と自動運転がもたらす破壊的な変革の時にあって、「自動車業界に参入するチャンスがある」いまこそ、Nioのアイデアを実現するときだとリーは言う。
さらに、「中国メーカーの作るクルマは安物だと思われています。平均価格の上昇に伴い、よりよい製品を創り出そうとしていますが、依然としてプレミアムなモデルではありません。中国にはプレミアムなブランドというものがまだ存在しませんが、われわれにはそうなるチャンスがあるのです」と、彼は話している。
Bitautoでの成功によって、「自動車業界の未来を理解することが出来ました。問題は、既存のメーカーがより優れたEVを創り出すことができないということではなく、モバイルインターネットの時代にあって、どうやって顧客にサービスを提供することができるか、彼らが理解していないことにこそあるのです」と、リーは話す。
それほどクルマ好きではないと認めつつ、「単なるクルマの良し悪しではなく、ユーザーの体験こそが問題であり、顧客に何を提供できるかが重要なのです。われわれの使命は単に良いクルマを創り出すということだけに留まらず、より良いユーザー体験を実現することにあります」
それでも、新たなユーザー体験を創り出すために、Nioには車両生産を行う必要があり、彼らのクルマが生産されているのが、上海から西に500kmほどの位置にある、1000万人に迫る人口を擁しながらもほとんどその名を知られていない、合肥市だ。