特別なロードテスト　さまざまな制約

急ぐ必要などなかった。天気は完ぺきで、予報ではそれが丸1日続くという。つまり、このクルマ独特のセンター配置のドライバーズシートに腰を下ろして、一瞬、記憶を遡るだけの余裕はあるということだ。

このクルマのロードテストは、数週間や数カ月ではなく、年単位の月日をかけてようやく実現したものであり、さらに、マクラーレンでは、ロードテストで試すことのできるF1のパフォーマンスを厳格に定め、われわれは、いついかなるときもそれを守る必要があった。

それでも、英国版Autocarの編集スタッフとして、われわれには読者に事実を伝える必要があったのであり、パブでビールを飲みながら、F1の加速性能について語ることができるのは、われわれが1994年5月2日の月曜日にブランティングソープで、そして翌3日にはミルブルックでテストを行ったからだ。

では、なぜ、ふたつのサーキットが必要だったんだろう？　それは、ミルブルックには素晴らしい路面が、ブランティングソープには、広大なスペースがあったからであり、ミルブルックでは0-257km/h加速を、ブランティングソープでは257-322km/h加速の計測を行っているが、このことはロードテストについても言える。

当時、英国版Autocarのロードテスト・エディターとして、このクルマのキャビンで多くの時間を過ごし、テストを行うとともに、その評価を行えたのは、ひとえに自分のお陰だと言いたいところだが、実際はそうではない。

F1のロードテストが実現したのは、当時の英国版Autocarが、長年にわたり、マクラーレンと、このクルマのデザイナー、ゴードン・マーレーとの関係を深めていたからであり、それこそが、当時、欧州エディターを務めていたピーター・ロビンソンや、当時もエディター・イン・チーフの座にあったスティーブ・クロプリー、そして、何よりもエディターのマイケル・ハーベイの存在が大きかった。

ハーベイがマクラーレンに伝えた言葉はシンプルなものだった。彼は、ロードテストを始めたのはAutocarが最初であり、依然としてもっとも広範なテストであり続けているのだから、自分たち以上に、F1をテストするのに相応しい存在はいないとして、このクルマのすべてをテストし、最良の部分を引き出すとともに、その責任は自らにあると言ったのだ。

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