マクラーレンF1 vs マクラーレン720S 比較試乗 伝説はいまも

公開 : 2019.06.08 11:50

突然の衝撃 真のプロフェッショナリズム

だが、F1のロードテストまでほんの数時間となったところで、まったく予期していなかった衝撃のニュースが飛び込んできた。日曜午後にサンマリノで行われていたレースで、アイルトン・セナがその命を落としたのだ。

ハーベイは、わたし以上にセナを崇拝していたが、それでも、ロードテストを予定どおり進めようとしていた。だが、マクラーレンチーム、特に、自らが開発したF1マシンに乗って、セナがワールドタイトルを獲得したマーレーにとって、その衝撃は計り知れないものがあり、彼らが予定通り現れるかどうか分からなかった。

だが、翌日午前8時にはF1を積んだ輸送用車両が到着し、ゴードンと、このクルマの開発を主導するだけでなく、マクラーレンのF1テストドライバーとして、セナのチームメイトでもあった、ジョナサン・パーマーも姿を見せてくれていた。ふたりとも憔悴していたに違いなかったが、それでも予定どおりロードテストは進められている。

それまで、これほどのプロフェッショナリズムを目にしたことはなかった。彼は姿を見せただけでなく、2日間に渡って、テストに加え、写真撮影のため、ノースヨークシャーに広がる荒野へと向かうわれわれに同行してくれたのだ。


いま思い出すのは、このクルマが、どれほどそれまでのロードカーのパフォーマンスというものを塗り替える存在だったかということだ。F1に比べれば、959やF40、XJ220、EB110といったモデルですら、違うレベルにあると言わざるを得ず、シフトアップを繰り返すなか、このクルマのV12が雄叫びを上げ、タイヤスモークを残して猛然と加速していくその様子は、実際にこの目で見るまでは想像すらできないものだった。

F1のドライバーズシートに座って、340km/hに到達したときのことは今でも鮮明に覚えており、ギャビン・コンウェイがその瞬間を録音したテープはいまも手元にある。

そして、パーマーがドライブするF1のパッセンジャーシートで、ふたたび340km/hの世界を体験しているが、このとき、パーマーの視界を遮るように取り付けられたカメラで撮影した、340km/hを表示するメーターの写真は、オープニングショットとして採用されている。

カメラマンが断固として同乗撮影を拒否したために、わたしがジョナサンの隣に座り、必要に応じて進路の微修正を指示できるよう準備しながら、カメラのケーブルをさばきつつ、17秒間のすべてを撮影したのだ。

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