マクラーレンF1 vs マクラーレン720S 比較試乗 伝説はいまも

公開 : 2019.06.08 11:50

マスターピース ある種の喜び

5速(幸いにも、この2台のギア比は非常に似通っている)であれば、720Sが息切れするところからでも、F1はさらに加速を続け、225-257km/h加速では、720Sの3.4秒を凌ぐ、3.2秒を記録している。

もちろん、現代のマクラーレンのほうが、より扱い易く、速さでも上回っており、技術的にははるかに優れたマシンだと言えるが、F1ではドライバーとのより深い繋がりを感じることができるのであり、マット・プライアーはこのクルマを、まるで600psクラスのパワーを備えたロータス・エリーゼだと言うが、まさに的を射た表現だ。

現代の基準で見れば、ブレーキだけが時代遅れの代物であり、それは記録が証明している。高速道路の最高速度から完全に停止するまでに必要な距離は、720Sが10mほども短いのだ。別の言い方をすれば、720Sがその動きを止めた時、F1はまだ時速48km/hで動き続けているということになる・・・

だが、720Sやその他の現代のスーパーカーやハイパーカーたちも、F1のパッケージングは真似することが出来ない。現代のクルマに求められる衝撃吸収構造やエアバッグ、パワートレインの補器類、インフォテインメントやその他のさまざまな装備が、それを不可能にしている。

4.0ℓV8エンジンを積んだ2シーターの720Sよりも小さなボディに(それでも、興味深いことにホイールベースだけはF1が上回っている)、3人の大人と、6.1ℓV12エンジンを積んで、それなりのラゲッジスペースまで確保することに成功しているこのクルマは、まさに驚くべき存在であり、マスターピースと呼ぶに相応しいだろう。


そして、もう2度とこんなクルマが生まれることはない。25年前、ふたたびこのクルマのステアリングを握ることはないだろうと思ったが、それは間違いだった。

まったく同じF1をふたたび運転することができたのだ。これが最後になることは確実だが、それでも、いま感じているのは、前回のような安堵でもなければ、寂しさでもない。

いま感じているのは、このクルマが登場して以降、時代を変革したスーパーカーとして、いまも歴史に残る存在であり続けていることを確認できたことに対する、ある種の喜びだった。

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