バットモービル BMW CSL 169台のキャブレター仕様 M社を象徴するクーペ

公開 : 2019.06.09 11:50  更新 : 2020.12.08 10:40

英国限定で存在した500台のCSLi

3色に塗り分けられた、三つ折りのCLSのパンフレットに掲載されていたパワーウェイトレシオは5.8kg/ps。1972年に発行されたものだが、それには3003ccのキャブレター式のCSLも載っているものの、実際にリリースされたという情報はない。3003ccまでボアアップされたエンジンには、すべてボッシュ社製のフュエルインジェクションが採用されている。

ちなみに、CSLiと呼ばれる500台限定の右ハンドル車も登場している。冒頭で紹介した英国市場向けのクルマで、シティパッケージと呼ばれる特別仕様が施されており、CSやCSiのものと同じバンパーも装備されていた。CSLiには、パワーステアリングなど重量のかさむ快適装備も実装されており、軽量化という本質は損なわれている。

もちろん、左ハンドル車でも同様に快適装備を搭載したクルマも選べた。BMWのボブ・ルッツは社用車として、3003ccのCSLにエアコンなどを付けたフルオプション状態のクルマ乗り回していたそうだ。セールス部門を率いていたルッツは、もし1000台のCLSを販売するなら、選択肢としてインジェクション・システムも必要だと考えていた人物。実際はレースには不向きではあったため、ホモロゲーションはキャブレターで通している。

CLSは0.25mmボアアップすることで、3003ccを獲得。M30型の直列6気筒ブロックとしては限界と呼べる数値だったが、ETCCでは3ℓ以上のグループ2クラスに参戦することになる。BMWのモータースポーツ部門としては、さらに排気量を増やすことを計画していたようだ。

また一層軽量なクーペ・プロジェクトの試験的な意味合いも、キャブレター仕様のCLSは含んでいた。ヨッヘン・ニーアパッシュがBMWに加わると、BMWモータースポーツ社として独立することが決まり、クーペ開発のプロジェクトには勢いがつくこととなる。

キャブレターを搭載したCSLは169台が製造され、21台がアルピナやシュニッツアーなどのチューニングメーカーやプライベーターが購入し、レースカーへと作り変えられている。残りの台数は、ヨーロッパ各国のBMWディーラーを通じて、一般へと販売された。

3003ccのインジェクション・モデルには、右ハンドル車と左ハンドル車とでも違うシャシーナンバーが振られ、識別のために2275/2285という番号が付いている。一方でキャブレター仕様のCSLには、通常のSCシリーズと同じ、2210や2211、2212というシャシーナンバーが充てがわれた。

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