バットモービル BMW CSL 169台のキャブレター仕様 M社を象徴するクーペ
公開 : 2019.06.09 11:50 更新 : 2020.12.08 10:40
走行距離6万4000kmのキャブレターCSLを発見
シャシーナンバー2211723のCSLは、169台のキャブレター車の中で85番目に製造されたクルマ。1972年1月21日にラインオフし、当時の7500ポンド(108万円)という金額でイタリアのワイン商が購入した。
カラーコード002番の鮮やかなコロラド・オレンジで塗られ、46年たった今でも走行距離は6万4000kmほど。塗装も当時の状態を保っている。軽量なCSLだが、その独創性や価値の認識が不十分だったこともあって改造されているケースが多く、この状態を保っていること自体が珍しい。
しかし今日では、CSLはBMWのモータースポーツにおけるアイコンのような存在。E9クーペとしては珍しく、2211723はまったくサビのないボディが保たれている。何しろ、製造をしていたカルマン社にはこんな冗談が残っているほど。「カルマン社がサビを発明し、イタリア人へ提供している」 あながち、完全なでまかせともいえないけれど。
このCSL、幸運なことに初代オーナーとイタリアのアスティ地方に1990年台はじめまで一緒に過ごしている。その間、環境の良い納屋で保管していたそうだ。そして2009年、英国にあるBMWの専門店、クラシックヒーローズのバーニー・ハルズがこのクルマの存在を知る。
ハルズは長年CSLを修理・販売し、自身でも運転してきたが、このCSLに出会うまで、キャブレター仕様のクルマは目にしたことがなかった。手に入れると、ミュンヘンのBMWクラシックへCSLを送り、可能な限りオリジナル状態に戻すべく、クルマの状態認証と解説書を準備してもらった。「BMWクラシックの方も興奮していました。彼らもCSLのキャブ車は見たことがなかったそうです」
ブレーキは組み直され、ゴム製のモールなどは新品に交換。ビルシュタイン製のダンパーもリビルトされたCSLは、純粋なオリジナルのお手本のような仕上がりだ。少ないながらも厳選されたハルズのBMWクラシック・コレクションの中でも、自慢の1台となった。