ロードテスト ポルシェ911 ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.06.16 09:50 更新 : 2019.07.02 10:11
結論 ★★★★★★★★★☆
「991より速くリッチで有能になった。ただし、活気は衰えているが」
客観的に見れば、ポルシェ911はまた腕を上げたといっていい。ありふれた話に聞こえるだろうが、このセグメントにおけるドライビングマシンの決定版だと広く信じられている使い勝手のいいスポーツモデルを、さらに改良しているのだから、ポルシェは賞賛されてしかるべきだ。
この新たな992型は、先代よりもバランスに優れ、実用的な敏捷性も高めている。また第2世代に入ったターボ過給パワートレインは、爆発的な直線加速のポテンシャルとクラストップレベルの燃費効率を誇る。インテリアは、エルゴノミクスでは名人級で、これまでの911よりセールスポイントがはっきりしている。しかも、パフォーマンスレベルで肩を並べるクルマに、乗り込んですぐさまこれほど速く走れるものは、おそらくないはずだ。
しかしながら、批判すべき点もお馴染みのものだ。この世代で、ポルシェ911はボディサイズがまた拡大し、過去の自分史を彩るレジェンドたちはもちろん、アストン・マーティン・ヴァンテージのような間接的に競合するスーパースポーツとのキャラクターの差はまた広がった。いっぽうで、価格帯では格上といえるアストンなどとの金額差は縮まった。
今後、992世代のバリエーションが増えれば、もっとわれわれをエキサイトさせてくれるだろう。とはいえ、その手始めとしては、今回のカレラSはおおむね上出来で、このクラスの新たな王位を勝ち取るにふさわしい。
担当テスターのアドバイス
リチャード・レーン
サーキットでアペックスを捉える際のスピードは、ノーマルといえる911としてはセンセーショナルというほかない。四輪操舵は、アンダーステアが発生するのを抑えている。GT部門が手がける次期GT3などの高性能仕様も、大きく進歩したものとなるだろう。
マット・ソーンダース
スポーツカーにドリンクホルダーが付いているのをどう考えるにしろ、997世代で登場したダッショボードから飛び出す折りたたみ式のそれがなくなったのは、個人的には残念だ。992の助手席についているそれは、全然エレガントではない。
オプション追加のアドバイス
ローダウン版のPASMは、乗り心地をひどく損なうものではないので、665ポンド(約10.0万円)を払ってもいい。1709ポンド(約25.6万円)のノーズリフトは、段差を乗り越える際のストレスをなくしてくれる。1592ポンド(約23.9万円)の後輪操舵はよくできている。
改善してほしいポイント
・エキゾーストノートに、少しでも過去のフラット6サウンド的な魅力を盛り込んでほしい。
・より小径のタイヤを用意してくれば、グリップレベルが穏やかになり、ハンドリングに遊べるキャラクターが生まれるだろう。
・シフトパドルのサイズや、変速の手触りのクオリティには、まだ向上の余地がある。MT仕様の変速クオリティも、さらに高めてほしい。