ロードテスト ポルシェ911 ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.06.16 09:50 更新 : 2019.07.02 10:11
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
この992型が、先代の991型よりほんの少しだけ大きくなったことを知っても、さほど驚きはしないだろう。古豪スポーツカーを見ればどれも、この数10年でモデルチェンジのたびに大きくなってきているからだ。今回のカレラSは、2016年にテストした先代と比較すると、20mm長く、44mm広く、41mm背が高い。ポルシェは事実上、旧型カレラ系の後輪駆動モデルにあったナローボディを捨てたといえる。
長年の間に繰り返してきた世代交代のたび、拡大を続けてきた911。それは限界域でのハンドリングのリファインと、リアエンジンレイアウトとショートホイールベースに起因する振り子効果という悪癖の矯正が狙いだ。しかしながら、1963年に誕生した初代と比べると、992型は229mm長く、152mm拡げられている。であれば、室内が広く、安全性が向上しているのも当然だ。価格の上昇は、もちろんいうまでもない。
3.0ℓフラット6は991後期型を踏襲し、992のそれも2基のターボチャージャーを備える。正確な排気量は2981ccで、これも変化なし。ただし、ターボは大型化され、電子制御ウェイストゲートバルブを採用した。インタークーラーは完全に改修され、新型のピエゾインジェクターは燃焼室内の燃料供給を理想化。ガソリンエンジン向けの粒子フィルターも装備されている。
こうした改良の積み重ねで、3.0ℓユニットは450ps /6500rpmと 54.1kg-m/2300〜5000rpmを発生。トルクバンドは、991のカレラGTSよりやや狭いが、大差はない。それらはカレラSの場合、すべてが8速PDKギヤボックスを介して後輪へ送られるが、4WDのカレラ4Sも用意される。新型トランスミッションのケース内には余剰スペースが設けられているが、これは準備中のハイブリッド仕様で電気モーターを組み込むためのものだとか。また、3ペダルMT仕様も順次追加される予定だ。
構造部分のアルミ比率を大幅に引き上げたことで、車両重量は先代カレラSのPDKモデルより20kg軽いという。テスト車の実測値は1525kgで、前後重量配分は36:64だった。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)ダンパーは再設計され、よりしなやかな乗り心地とレスポンスのいいハンドリングを目指している。ただし、テスト車は車高を10mmダウンしたスポーツシャシー仕様だ。
991から導入された後輪操舵はオプションだが、テスト車には搭載されていた。また、スポーツエキゾーストやスポーツクロノパッケージ、フロントアクスルのリフトシステムも装備していた。