1970年代の名車 オレンジ色の個性派 BMW CSi アルファ・ロメオ・モントリオール

公開 : 2019.06.18 11:10  更新 : 2020.12.08 10:40

販売で苦戦したモントリオールと、好調だったCS

しかしシャシーに関してはさほど先進的というわけでもなく、基本的にはアルファ・ロメオ105シリーズ系のサルーンや、シティ・クーペのGTVなどと共通。例外といえば、4輪にディスクブレーキが装備されていることだろうか。

最高速度が225km/hで当時の価格で5000ポンド(72万円)のグランドツアラーは、後輪がリジッドアクスル。軽量でLSDも搭載されていたが、実際のロードホールディング性は平均的なものだった。エクステリアデザインが1967年の万博で極めて好評だったことを理由に、そのまま生産モデルへと発展した事実を、上手にパンフレットのキャッチコピーに活かしている。

当時は、アルファ・ロメオのフラグシップモデルだった2600スプリントを交代させる、新しいモデルを必要としていたことも事実だ。フェラーリ・ディノのイメージを利用したフィアットのプロモーション展開と同じことを、アルファ・ロメオも狙っていたのかもしれない。実際、ディノとモントリオールはライバル関係となった。皮肉にもベルトーネ社の同じ生産ラインで、大きく評価の分かれた2台は生産されることになったのだけれど。

1971年5月にモントリオールの生産は開始され、その年に700台が売れている。翌1972年の販売は好調で2350台が売れているが、それ以降、1977年までの5年間に売れたのは900台に留まる。苦戦を強いられていたといっていいだろう。そんなアルファ・ロメオを横目に、アルプス山脈の反対側、ミュンヘンのBMWは6気筒エンジンを搭載したE9クーペの人気で盛り上がっていた。

1968年、BMWの2800 CSは既にアメリカで高い評価を得ていた。そこへさらに1971年、パワーが向上しブレーキ性能も良くなった3.0CSが登場する。かなり高めの価格設定と、カルマン社製という不安材料を持っていたにも関わらず、ラグジュアリー・クーペとして最も成功したクルマへと順調に進化を続けていた。

ピラーレスのボディデザインは先進的とはいい難く、直列6気筒のドライブトレインを共有していたE3サルーンほど、シャシー剛性で優れているわけでもない。E9型のフロントピラーより後ろは、基本的には1965年から1969年にかけて製造されていた2000C/CSと同じもの。しかし1968年にフロントマスクには素晴らしいデザインが与えられ、オリジナルを気にするオーナーはほとんどいなかった。

ボディの基本形はベルトーネ社がデザインから製造までを行っていた3200 CSにまで遡ることができる。まるで水槽のような、全方位に大きなガラス窓がついたキャビンが特徴的。BMWもベルトーネ社との関係は良好だった。6気筒のE9型クーペのハンサムでノーズの尖ったスタイリングは、ベルトーネのために働いていたイタリア生まれのガンディーニが与えたものだ、という見解もあるほど。確かに、ドイツ製にしては群を抜いておしゃれだと思う。

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