試乗 マセラティMC12 エンツォ・フェラーリの心臓を持つロードゴーイングGT1

公開 : 2019.07.06 07:50  更新 : 2020.12.08 10:40

フェラーリの支援を受けて誕生したMC12

それ以降、レースからは一時的に手を引く形となったマセラティ。トライデントが攻撃を仕掛けるのはミレニアムまで待たなければならなかったが、驚くほどのことではなかった。1968年にモデナの実業家オルシがブランドを放棄し、シトロエンやデ・トマゾなどと混乱の時期を過ごすマセラティ。キャラミで灼熱の中で優勝を飾ったマセラティだが、その後の煮えたぎったような財政状況を考えれば当然ともいえる。

マセラティは1990年代にかけて様々な支援に頼りながら、何とか生きながらえる。政府による支援は徐々に減額していく状況ではあったが、1994年までにイタリア国民の税金、4000億リラ(約300〜400億円)を消費していた。

親会社のフィアットによる短期的な所有を経て、フェラーリが1997年に経営へ関わるようになると、経営は一気に安定化する。高品質なロードカーを生産することが可能となり、モータースポーツへの復帰も現実のものになる。フェラーリのもとで、デ・トマゾとの関係性を払拭するには充分な、クーペとスパイダーのボディを持つ3200GTをリリース。そしてマセラティの注目はサーキットへと移っていく。跳ね馬との密接な関係性を活かす、高貴な雰囲気を持つマシンを生み出す機会を伺うことになる。

フェラーリとマセラティとの共同プロジェクトは2002年の5月にスタートする。コードネームはMCCとよばれ、レース参戦のホモロゲーション取得のために、50台の究極ともいえるマシンを生み出すことを目指した。当時のフェラーリのフラッグシップモデル、エンツォ・フェラーリに設計・技術面では大きく依存していたのだけれど。

モンツァの友人からは、モノコックシャーシを筆頭に、多くの重要なコンポーネンツを譲り受けることができた。シャシーの素材は軽量なカーボンファイバーと難燃性のノーメックス・ハニカム素材のサンドイッチ。フロントとリアには軽量なアルミニウム製のサブフレームが取り付けられた。心臓にも、エンツォと同じ5998ccの自然吸気V型12気筒エンジンが採用されている。

ツインカムヘッドを持ち、フェラーリ・マセラティのジョイントで開発されたクアトロポルテに搭載されていたV8エンジンと同じ104mmのボアを採用。630psの最高出力が与えられた。比較するとエンツォよりも30psほど劣っていることに気づくが、マセラティの許容回転数が7700rpmに制限されているため。ちなみにエンツォは660psの最高出力だが、発生回転数は7800rpmだ。カムタイミングが調整され、カム自体もチェーン駆動からギア駆動へと切り替わっている。

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