フォルクスワーゲンID R EVニュル最速ラップ更新、背景は 次なる狙いも
公開 : 2019.07.06 11:50
EVには試練 さらなるスピードが必要
ニュルブルクリンクのようなサーキットでは、抵抗を最小化することが重要であり、特にコース最終盤に1.3マイル(2.1km)もの距離を持つデッティンガー・ヘーエのストレートを攻略しなければならないのは、EVにとっては大きな試練となる。
低速コーナーが少ないということは、ブレーキングによるエネルギー回生のチャンスが少ないことを意味しており、エネルギー・マネジメントシステムの設定が変更されるとともに、新たなブリヂストン製タイヤと軽量なカーボンファイバー製ブレーキディスクが装着されている。
そして、フォルクスワーゲンは、このニュルブルクリンクでもパイクス・ピーク同様、ロメイン・デュマにこのクルマのステアリングを預けている。パイクス・ピークの前チャンピオンとして、フォルクスワーゲンからこの世界的に有名なヒルクライムレースへの挑戦に向け、指名を受けたデュマだったが、実はニュルブルクリンク24時間レースでも複数回の勝利を上げている。
だが、デュマにとっても、6月3日の月曜日、ID Rで駆け抜けたニュルブルクリンクにおけるスピードは、初めて経験するものだった。
「GTカーと比べても、このクルマのコーナリングスピードとGははるかに強烈です」と、彼は話す。「このクルマにとっての限界とは、ドライバーの体力と精神力でしょう」
パイクス・ピークでは1度しかタイムアタックのチャンスに恵まれなかったデュマだが、ノルドシュライフェでは丸一日が確保されており、2台のID Rのシャシー(アタック本番用と、評価とテストランを行うためのスペアだ)を使って、5回の走行を行っている。
セットアップが完ぺきではなかった1周目の記録は6分25秒というものだったが、再度調整を行った結果、2周目ではゴールした時点でパワー低下に見舞われていたにもかかわらず、6分12秒というタイムを記録している。
「特に高速コーナーでは集中していました」と、この周回を終えたあとにデュマは語っている。「フルーグプラッツのジャンプスポットには、255km/hで進入し、250km/hで空中に飛び出しています。1周目の進入速度は245km/hでしたから、5km/hを上乗せしたことになりますが、それでも、車体を抑えたままで、あと5km/hのスピードアップが必要です」