フォルクスワーゲンID R EVニュル最速ラップ更新、背景は 次なる狙いも
公開 : 2019.07.06 11:50
驚異のタイム 偉大なマシン
昼食後、さらに2周の走行を行っているが、最終アタックの前の「練習走行」で、デュマは6分9秒という、それだけでも、ID Rをノルドシュライフェで史上2番目に速いクルマにするには十分なタイムを記録している。
だが、最終アタックで、さらなる記録更新に成功したのであり、6分5秒336というそのタイムは、EVに限らず、すべてのマシンにとって驚異的なものだった。
「最終ラップではすべてのコーナーで限界に挑戦し、カルッセルではこれまで試したこともないほど、インサイドのラインを走行しています」とデュマは言う。「多少マシンのフロアを痛めても問題ないだろうと考えていました。まさに限界へのチャレンジのスタートであり、非常に興味深い体験の始まりでした」
ID Rであればこれ以上の記録更新も可能だろうか? それは間違いないようだ。フォルクスワーゲンは、シミュレーションでの最速ラップはさらに速いものだったことを示唆しており、モータースポーツ部門トップのスヴェン・スミーツは、6月としては異常な高温によって、バッテリー温度とパワーの管理が難しかったと話している。そうだとしても、このタイムが驚くべきものであることに変わりはない。
だが、それでも今回のタイムを大幅に上回るような記録更新は難しく、昨年、ティモ・ベルンハルトがポルシェ919 Evoに乗って記録した5分19秒45という、いまだに信じられないようなタイムが脅かされるようなことは決してなかった
919 Evoは、720psを発揮する2.0ℓV4エンジンと、439psの出力を誇る電気モーターを組み合わせたハイブリッドパワートレインによって、ル・マンを勝利したチャンピオンカーに、一切の制限を加えることなく、徹底的なモディファイをほどこしたマシンだった。
だが、この驚異の記録に迫ることが出来なかったとしても、ID Rが偉大であることにいささかの疑いもない。ID Rは919 Evoを除くすべてのクルマを上回る速さを見せつけたのであり、ベルンハルトの記録更新まで、35年間、誰も破ることのできなかった、ステファン・ベロフが1983年にポルシェ956に乗って打ち建てた6分11秒13というタイムを上回ることにも成功している。
EVであるかないかにかかわらず偉大なマシンであり、EVテクノロジーにおけるもうひとつの到達点として、ID Rが君臨する場所がさらにひとつ増えたということだ。