ルノー・スマートアイランド構想 ポルトガル現地ルポ 真のゼロエミッションへ
公開 : 2019.07.07 16:50
小さな一歩 大きな意味
現時点でこうしたバッテリーの最大の供給元となっているのが、事故車両とフランス郵政公社であり、郵政公社では車両が非常に酷使されるため、バッテリー寿命の問題以前に、わずか6年しか車両そのものがもたないのだ。だが、その結果、エネルギー貯蔵システムの一部として活用されることで、リサイクルされる日を遅らせるとともに、さらなる有効活用を可能にしている。
「再利用バッテリーがシステムの中核となっています」と、コトリムは言う。「グリッドに安定をもたらし、より緊密なネットワークにするとともに、電圧管理にも役立てることができます」
ポルト・サントでは、すでに何台かの再利用バッテリーの利用が始まっており、そのうち3台は、ヤシの木が生えている以外はどこにでもありそうな建物に設置され、一部はマデイラで廃車になったEVからこの島へとやって来たものだ。
これまでに6台のバッテリーがグリッドへと接続されており、その容量は50軒の家庭が30分間で消費する電力を十分賄えるだけのものとなっている。未確認だが、こうした再利用バッテリーの寿命は10年程度だろうと考えられている。
だが、問題はこうしたEVによる電力のバランス機能が広く普及するまでに、どれだけの時間が必要になるかということだ。
もちろん、単に発電するだけでなく、EVのバッテリーを使って、不安定な再生可能エネルギーからの発電を上手くコントロールできるような、大規模で柔軟な調整機能を備えた電力グリッドが実現するまでには、まだまだ時間が必要だろう。
だが、EVのバッテリーを蓄電池として活用することは非常に理に適っている。
大規模な電力グリッドから、文字通り電力が垂れ流される状況から、再生可能エネルギーを実際の電力需要に結びつけるために、EVは非常に重要な存在となりつつある。
ポルト・サントの計画は、こうした世界に向けた小さな一歩かも知れないが、ルノーの慎ましやかなモデルが証明しているのは、これには大きな意味があるということだ。